column
コラム
公開日: 更新日:
パーキンソン病の予防に喫煙が有効って本当?関係性を解説
喫煙は「百害あって一利なし」といわれるように、人体にとって有害なものというイメージをもたれている方が多いのではないでしょうか?
しかし、最近の研究では、喫煙がパーキンソン病の治療においてむしろ良い作用を生むことが分かっています。
本記事では、パーキンソン病と喫煙の関係性を深掘りします。
後半では、喫煙以外の予防法も解説しているので、ぜひ最後までご一読ください。
パーキンソン病とたばこの関係
パーキンソン病とは、脳の黒質にある神経細胞が減少し、ドーパミンが生成されなくなることによって、脳から出る指令が筋肉に伝わらなくなる病気です。
安静時に震えが生じたり筋肉が硬直したりする、また体が動かしにくく転びやすくなるといった運動症状が表れます。
そのほかに、中枢神経や自律神経へのダメージによって、便秘や頻尿、睡眠障害、抑うつといった非運動症状も引き起こされます。
パーキンソン病の研究は進められているものの、はっきりとした原因や症状を改善する方法はいまだ解明されていません。
しかし最近では、たばこの「ニコチン」が脳に良い作用をもたらしてパーキンソン病の発症リスクを下げる、という研究結果が出ています。
ニコチンは長らく人体にとって有害な物質と考えられてきたため、この結果には驚く方も多いでしょう。
パーキンソン病とニコチンの関係は、のちほど詳しく解説いたします。
参照元:九州大学学術情報リポジトリ「Cigarette Smoking and Parkinson’s Disease: A Meta-Analysis」
パーキンソン病とドーパミンの関係
たばこに含まれるニコチンが、なぜパーキンソン病のリスクを下げるのでしょうか?
その仕組みを知るためには、パーキンソン病の発症に深く関与している「ドーパミン」という物質を理解することから始めましょう。
私たちが身体を思うがまま動かせるのは、脳からの指令が神経細胞を伝わって、筋肉細胞に届けられるからです。
神経細胞同士の情報のやり取りは、主にセロトニンやアセチルコリン、ドーパミンなどの神経伝達物質が行います。
冒頭でも少し触れましたがパーキンソン病は、この神経伝達物質の一つであるドーパミンが減ることによって発症します。
このようにドーパミンの減少は、パーキンソン病の発症に深く関与しているのです。
たばこに含まれるニコチンとドーパミンについて
たばこに含まれるニコチンの科学的な構造は、神経伝達物質の一つであるアセチルコリンに非常に似ています。
そのアセチルコリンにはドーパミンの分泌を促す役割があるため、似たような構造のニコチンがアセチルコリン受容体を刺激することでも同じ現象が起こります。
そのため、ドーパミンの分泌が減ることで発症するパーキンソン病は、ニコチンによるドーパミン放出作用によってその発症リスクが下がるのです。
多くの研究者が口をそろえて言うのは、ニコチンは強力な向知性薬(スマートドラッグ)であるということです。
実際、適切な投与量であれば非常に安全な物質であることが分かっており、記憶や認知の維持、モチベーションの向上など、私たちの脳に有益な効果をもたらします。
パーキンソン病と喫煙の関係
パーキンソン病と喫煙に関する最初の研究は、1966年にさかのぼります。
そこから現在までのあいだに、さまざまな研究が行われ、喫煙には以下のようなメリットとデメリットがあることが判明しました。
パーキンソン病の予防におけるたばこのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
|
|
神経細胞を保護する役割もあるニコチンは、すでにパーキンソン病を患っている方の手足の震えや筋肉が硬直する症状を軽減することも可能です。
また、似た構造を持つアセチルコリンとニコチンに関する研究が進めば、将来的に新たな薬や治療法を開発するための手掛かりになる可能性もあります。
ただし、喫煙の頻度や期間については考慮されていないので、まだまだ詳細なデータの蓄積が必要だといえるでしょう。
喫煙に頼らないパーキンソン病の予防方法
ニコチンがパーキンソン病の予防に有用なことが判明したからといって、そのためにたばこを吸い始めるのはあまり得策ではありません。
なぜなら、パーキンソン病の予防に効果的であるというメリットよりも、そのほかのデメリットのほうがはるかに有害だからです。
喫煙とは対照的である健康的でイキイキとした生活こそ、ドーパミンが分泌されてパーキンソン病の予防に効果的だといわれています。
以下に、具体的な予防方法をまとめたのでご覧ください。
①定期的に運動する
運動後に、なんだかすっきりしたような、晴れ晴れとした気持ちになった経験はありませんか?
じつは、これも幸福感をもたらすドーパミンの作用です。
適度に身体を動かすことはドーパミンの分泌を促すので、週2~3回ほどの運動を習慣化するのが理想的です。
②好奇心を刺激して日常を楽しむ
行ったことのない場所に足を運んだり、新しいことにチャレンジしたりすると、好奇心が駆り立てられてドーパミンが分泌されます。
自分のやってみたいことに貪欲に挑戦して、ワクワクするような経験を増やしながら毎日を過ごしてみましょう。
③ストレスをためない
ストレスがたまるとドーパミンの分泌が少なくなり、最悪の場合うつ病や不眠症を引き起こす可能性があります。
ストレスは、大なり小なり誰もが抱えているものです。
ストレスに打ち勝とうと頑張るのではなく、うまく受け流せるように工夫できると理想的です。
睡眠時間を十分に確保したり、趣味に没頭したりするなど、自分なりのストレス発散方法を見つけて気分転換を心がけましょう。
パーキンソン病の予防に喫煙が有用なのは本当!ただし、健康的な生活で予防するのが理想的
本記事では、パーキンソン病の予防に喫煙が有用であるかを、ニコチンの特性に言及しながら解説しました。
たばこに含まれるニコチンにはドーパミンの分泌を促す効果があり、パーキンソン病の予防や症状の緩和に効果があります。
しかしながら、喫煙ばかりの不健康な生活は、ほかの病気のリスクを高めてしまうため本末転倒です。
適度な運動を習慣化したり、ストレスためないように意識したりして、健康的な生活からドーパミンの分泌を促すのが理想といえるでしょう。
有料老人ホームスーパー・コートは、パーキンソン病の介護に特化した専門住宅です。
大切なご家族のサポートは、きめ細かなホスピタリティに定評がある私たちにお任せください。
監修者
花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。