コラム
パーキンソン病の方は、自立した状態から徐々に筋肉が固くなっていき、介助や介護が必要になります。
投薬やリハビリテーションで進行を遅らせることは可能ですが、介護が始まったときには、患者さんの立場で服薬管理や生活環境の整備を行う必要があります。
この記事では、パーキンソン病の方を介護する際に意識したいポイントを中心に紹介します。パーキンソン病に適用できる介護保険制度も解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
パーキンソン病の方を介護する際のポイントは、「服薬管理」「生活環境の整備」「食生活の見直し」「着脱しやすい衣類の用意」の4点です。それぞれのポイントを確認していきましょう。
パーキンソン病の薬にはいくつかの種類があり、患者さんの症状や年齢などに合わせて処方されます。薬の効果を得るためには、決められたタイミングで薬を飲み続けることが大切です。
しかし、パーキンソン病の患者さんは気分障害や認知障害といったトラブルを抱えているケースが多く、薬の飲み忘れや誤った飲み方になってしまう場合があります。そこで、介護者が正しく服薬管理を行う必要があるのです。
自宅介護の場合などで服薬管理を忘れるおそれがあるときは、服薬カレンダー・服薬用のピルケース・服薬アプリといったツールを活用してみてください。
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パーキンソン病が進行すると、スムーズな歩行や障害物の回避が難しくなります。自宅でパーキンソン病の方を介護する際は、予期せぬアクシデントの発生に十分注意しなければなりません。
障害物になりうる家具・物品はすべて片付けて、通路や進路をスムーズに通れるように整えましょう。
階段や部屋と部屋の間にある段差の解消、トイレや患者さんの自室に手すりを設置するほか、つかまり立ちができる杖や歩行器といった福祉用品を利用するなどして生活環境を整えましょう。
パーキンソン病の食事制限は特にありませんが、全身の筋力が落ちることで口・舌・頬・首周りの筋運動が低下するため、嚥下(えんげ)障害が現れる場合があります。
うまくものが飲み込めない患者さんには、噛み砕きやすく飲み込みやすい食べ物や飲み物を用意しましょう。また、餅のように粘性があり喉に詰まりにくい食材は使用しないように注意してください。
パーキンソン病が進むと、手指を思うように動かしづらくなるため、体を締め付ける衣類や小物は着脱に時間がかかります。衣服全体の着脱に介護が必要になると、今度は介護者に負担がかかってきます。
着脱しやすいようにゆったりとした下着や洋服を揃えておくと、起床・就寝時の着替えや入浴・排泄の介護に役立ちます。[1]
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参考:日本静脈経腸栄養学会雑誌32「パーキンソン病の基礎知識と嚥下障害患者の栄養管理」
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パーキンソン病の方は介護保険制度が利用できます。介護認定を受ける基準と、受けられるサービスについて確認していきましょう。
パーキンソン病と診断された場合、厚生労働省が定める「特定疾病」に該当するため、介護認定の対象になります。
ただし、パーキンソン病は2つの基準があります。「ホーエン・ヤール重症度分類」と、厚生労働省が定める「生活機能障害度」に照らし合わせて、ホーエン・ヤール重症度分類Ⅲ度と生活機能障害度Ⅱ度に該当していれば、介護が必要と判断されます。
介護施設への入居は原則的に65歳以上の方に限られますが、パーキンソン病の方は40~64歳の方でも施設に入居できます。
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介護認定の後、受けられるサービスは以下のとおりです。[2]
介護サービスの種類 | サービスの名称 | 介護サービスの内容 |
在宅で利用するサービス | 訪問介護 | 訪問介護職員が入浴・排泄・食事の介護、調理・洗濯・掃除などの家事を行う |
訪問看護 | 看護師などが清潔・排泄ケアなどの日常生活のサポートや医師の指示のもとで医療の提供を行う | |
福祉用具貸与 | 日常生活や介護に役立つ福祉用具(車椅子・ベッドなど)のレンタルサービス | |
通所で利用するサービス | 通所介護 | 食事や入浴などのサポート、心身の機能を維持向上するための機能訓練、口腔機能のケアを日帰りで提供する |
通所リハビリテーション | 施設や病院などで、日常生活の自立を助けるために理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などがリハビリテーションを行い、利用者の心身機能の維持回復を図る | |
宿泊で利用するサービス | 短期入所生活介護
(ショートステイ) |
施設などに短期間宿泊し、食事や入浴などの支援や心身の機能を維持向上するための機能訓練の支援を行う |
居住系サービス | 特定施設入居者生活介護 | 有料老人ホームなどに入居している高齢者が、日常生活上の支援や介護サービスを利用する |
施設系サービス | 特別養護老人ホーム | 要介護3以上で常に介護を必要とする方を対象に、食事・入浴・排泄などの介護を一体的に提供する |
介護老人保健施設 | 自宅で生活を営めるように、支援が必要な方が入所する。看護・介護・リハビリテーションなどの医療や日常生活上の世話を提供する | |
その他 | 小規模多機能型居宅介護 | 利用者の選択に応じて、施設への通いを中心に短期間の宿泊や利用者の自宅への訪問を組み合わせて日常生活上の支援や機能訓練を行う |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 定期的な巡回や随時通報への対応、看護サービスなどを利用者の心身の状況に応じて、24 時間 365 日提供する |
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[2]参考:厚生労働省「介護保険制度について」
今回は、パーキンソン病の方を介護する際に意識したいポイントと介護サービスの種類について紹介しました。
パーキンソン病はゆっくりと進行するものの、筋肉が固くなっていくと患者さん自身が自立した生活を送りにくくなってしまいます。少しでも進行を遅らせるために、治療やリハビリテーションは早期に開始する必要があります。
介護者の方は、将来的な介護保険制度や介護サービスの利用も視野に入れて患者さんと話し合い、病気の特徴を押さえたうえでケアを行ってください。
パーキンソン病の方ができるだけ生活に不安や不満を感じることなく過ごしていくためには、普段の住環境も重要です。有料老人ホームや高齢者住宅を運営しているスーパー・コートではパーキンソン病専門住宅もご用意しているので、お気軽にご相談ください。
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監修者
花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。