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パーキンソン病の主な症状とは?診断の基準・検査方法も紹介

パーキンソン病の主な症状とは?診断の基準・検査方法も紹介

パーキンソン病は、脳内のドーパミンが不足することでさまざまな症状を引き起こす病気です。

体に現れる症状は、運動症状と非運動症状に分かれます。筋肉が硬くなり、動かしづらくなる運動症状が一般的に知られています。症状の進行に合わせて非運動症状も現れやすくなるため、内容をよく理解しておく必要があります。

ここでは、パーキンソン病の症状である運動症状と非運動症状を紹介します。
診断の基準や検査方法、3つの治療方法についてもみていきましょう。

パーキンソン病の主な症状

パーキンソン病の主な症状は、体の動きが阻害される運動症状と、運動以外の機能が低下する非運動症状に分けられます。

それぞれの障害について確認していきましょう。

症状①運動症状

パーキンソン病の運動症状は、脳から運動を円滑に行うための指令が正しく筋肉に伝わらないために起こります。

【パーキンソン病の4大症状】

  • 安静時振戦
  • 動作緩慢(無動・寡動)
  • 筋強剛(筋固縮)
  • 姿勢反射障害

安静にしているときの体の震え・ゆっくりとした動作になる・筋肉が通常よりも硬くなる・姿勢や体のバランスをとりづらくなる症状が4大症状と呼ばれています。

症状②非運動症状

非運動症状とは、運動症状以外にみられるさまざまなトラブルの総称です。

具体的には、次の4つの症状が現れることがあります。

【パーキンソン病の非運動症状】

  • 自律神経障害
  • 睡眠障害
  • 認知・精神機能障害
  • 感覚障害

めまいや立ちくらみ、睡眠にかかわるトラブルや、記憶・精神などの障害が非運動症状の例です。

パーキンソン病はゆっくりと進行する病気のため、すべてを一度に発症することはありませんが、いずれかの症状が現れたときは、早期に治療を開始する必要があります。

パーキンソン病の診断の基準

パーキンソン病の診断には、進行度をチェックする2つの基準が用いられています。

ここからは「ホーエン・ヤール重症度分類」と厚生労働省によって定められた「生活機能障害度」についてみていきましょう。

パーキンソン病の重症度

ホーエン・ヤール重症度分類
Ⅰ度 体の片側に手足の震え、筋肉のこわばりがある
Ⅱ度 手足の震え、筋肉のこわばりが体の両側にみられる
Ⅲ度 姿勢やバランスが保持できなくなり活動に制限が出る
Ⅳ度 日常生活の一部で介助が必要になる状態
Ⅴ度 一人で起立・歩行ができない状態

ホーエン・ヤール重症度分類は震えの出現場所と姿勢・バランスの保持、介助の程度によって5段階に分けています。

生活機能障害度

生活機能障害度
Ⅰ度 日常生活や通院にほとんど介助を必要としない
Ⅱ度 日常生活や通院に部分的な介助を必要とする
Ⅲ度 日常生活や通院に全面的な介助が必要

生活機能障害度は日常生活における介助の必要性で3段階に分けています。

パーキンソン病の診断は何から行うのか?

パーキンソン病を調べるためには、専門的な知識をもつ脳神経内科または神経内科を受診する必要があります。

体に震えや異常が現れたときに整形外科を受診する方も少なくありませんが、症状によって医師が脳神経内科や神経内科の専門医を紹介してくれます。

専門医による問診では、既往症・症状の程度・血縁者にパーキンソン病の罹患者がいるか・患者さんが普段飲んでいる薬とその副作用も確認します。さらに詳しく症状を調べるために画像検査や血液検査を行い、病状の診断や説明が行われます。

パーキンソン病の検査方法

パーキンソン病の検査方法は、画像検査と血液検査の2種類に分けられます。
いずれも症状を正しく見極めるために実施され、患者さんごとの状態を把握する検査です。

ここからは、2つの検査方法について詳しくみていきましょう。

方法①画像検査

画像検査では、CTやMRIといった精密な画像撮影が行える機器を使用します。

CT・MRI検査

CT・MRI検査は、パーキンソン病そのものに対して行う検査ではありませんが、患者さんの脳内の状態を画像で確認することでパーキンソン病以外の病気や原因がないかを調べます。

MIBG心筋シンチグラフィー

MIBG心筋シンチグラフィーは、MIBGという物質を体内に注射し、心臓を撮影して自律神経の機能を調べる検査です。

パーキンソン病と似た症状をきたす「レビー小体病」や、その他の神経変性疾患の鑑別診断に利用される方法です。

Dat SPECT

Dat SPECT(ドーパミントランスポーターSPECT)検査は、脳内のドーパミン量を調整する構造物「ドーパミントランスポーター(Dat)」の変化を画像でとらえる方法です。(※)

この検査によって、脳の中で起きている変化を画像で把握し、パーキンソン病の検査と、パーキンソン病に似た症状を引き起こす他の病気との鑑別を行います。

※参考元:国立研究開発法人国立国際医療センター病院「脳ドーパミントランスポーターシンチ(ダットスキャン®)

方法②血液検査

血液検査は、パーキンソン病と他の病気との区別に使われる方法です。

血液検査のみでパーキンソン病を確定させることはできませんが、特定のバイオマーカーを検出することで他の病気を発見したり、診断の精度を高めたりすることができます。

画像検査とあわせてパーキンソン病やその他の病気の状況の判断に使われ、患者さんの体調・体質の把握に役立てられている方法です。

パーキンソン病の治療法

パーキンソン病の治療法は、患者さんの体調や症状に合わせて薬物療法を中心に実施します。

筋力の低下を予防するために理学療法を組み合わせたり、薬物療法のみで効果が得られない症状には外科治療を行ったりする場合もあります。

ここからは、3つの治療方法をみていきましょう。

治療法①薬物療法

薬物療法は、パーキンソン病の初期段階から行われる服薬(投薬)治療です。

非常に軽度な状態であれば、患者さん自身のリハビリや生活の心がけを重ねて様子をみますが、早期治療が必要と判断されたときは薬を内服して経過を観察します。

症状が進んで生活に支障が出てくると、ドーパミンを薬で補充する治療が開始されます。薬の効き目や相性をみながら、医師と相談のうえ薬物療法を実施するのが一般的です。

ドーパミンアゴニスト(ドーパミン作動薬)やL-ドパ(レボドパ)製剤などの薬を、体質や症状に合わせて服薬し、副作用が強ければ減量や他の薬への変更を行います。

治療法②理学療法

理学療法は、病気やけがに対して行われる体操やマッサージ、電気・熱などを使った治療の総称です。

筋肉の機能が低下しやすいパーキンソン病に対しては、体の可動域を狭めないためにも早期の段階から理学療法としてストレッチやマッサージ、柔軟体操を行うとよいとされています。

日本神経学会のシンポジウムで発表された「パーキンソン病の最新リハビリ療法」によれば、理学療法はパーキンソン病にとって有効な治療手段であり、体の機能や筋力バランスの改善に役立つとされています。(※)

※参考元:日本神経学会「パーキンソン病の最新リハビリ療法

治療法③外科治療

パーキンソン病における外科治療とは、薬物療法の効果が得られにくく症状のさらなるコントロールが必要な場合に検討される外科的治療です。

代表的な例として脳深部刺激療法(DBS)が挙げられ、脳内に電極を埋め込んで電気刺激を送り、神経細胞が興奮しないように抑えます。

また、集束超音波治療法(FUS)という、ふるえの原因となっている脳の部分に超音波を当てることで、凝固させて症状を緩和する治療法もあります。

患者さんの年齢や体調、既往症の状況なども踏まえ、薬物療法や理学療法の効果もみながら手術を検討する必要があります。

パーキンソン病に適用される診断基準や検査方法をチェック

今回は、パーキンソン病に代表される主な症状と診断方法、3つの治療法について紹介しました。

パーキンソン病にかかると、症状はゆっくり進行します。
しかし早期に発見し、適切な治療していくことによって、健康的な日常生活が維持できます。

治療方法は問診や検査の結果を総合的に判断します。気になる症状があるときは、早めに脳神経内科や神経内科の専門医を受診してください。

スーパー・コートではパーキンソン病専門住宅を運営しており、パーキンソン病のご入居者の運動機能の維持や生活の質の向上を目指した取り組みにも力を入れているので、ぜひご相談ください。

監修者

監修者の写真

花尾 奏一 (はなお そういち)

介護主任、講師

<資格>

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

<略歴>

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。

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