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パーキンソン病とアルコールの関係は?治療薬への影響も解説

パーキンソン病とアルコールの関係は?治療薬への影響も解説

「パーキンソン病になったらお酒を飲んではいけないのかな……」と不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
症状の軽快につなげるためにも、アルコールとの付き合い方は考えたいところです。

そこで本記事では、パーキンソン病とアルコールの関係性をご紹介したうえで、治療薬への影響もお伝えします。
パーキンソン病の治療に際して、ご自身やご家族のために情報を集められている方は、ぜひご参照ください。

そもそもパーキンソン病とは?

パーキンソン病は、中脳にあるドーパミン神経細胞が減少することで生成される「ドーパミン」が不足し、身体の動きに制限がかかる病気です。
ドーパミンはアルコールを摂取することでも分泌され、意欲や幸せを感じたり、学習・運動機能を調節したりするといった脳機能に関わっています。

ドーパミン神経細胞が減少する原因は定かではありませんが、不足することで運動機能を調節する脳の指令が筋肉にうまく伝わらなくなり、さまざまな症状が引き起こされます。
そのため、パーキンソン病の治療には、ドーパミンを補充する薬を用いた薬物療法が施されることが一般的です。

なお、パーキンソン病は50歳以上で発症することが大半ですが、40歳以下で罹患する場合もあります。

パーキンソン病の主な症状

パーキンソン病には、主に運動症状と非運動症状がみられます。
はじめに、運動症状の例をご紹介します。

【パーキンソン病の運動症状】

  • 手足がふるえる
  • 手足がこわばる
  • 動きが遅く小さくなる
  • よく転ぶようになる

このように、身体を思い通りに動かせなくなるのが、パーキンソン病における運動症状の特徴です。

次に、非運動症状の代表例は以下の通りです。

【パーキンソン病の非運動症状】

  • 便秘
  • 頻尿
  • 起立性低血圧
  • 精神症状
  • 睡眠障害
  • 嗅覚障害

パーキンソン病の非運動症状としては、排泄や睡眠など、主に生活の質を低下させるような症状が表れます。

パーキンソン病とアルコールの関係性

アルコールは、パーキンソン病の症状に直接的な影響を与えるわけではありません。
むしろ、滋賀医科大学の研究結果によると、ワインや蒸留酒を飲む方と比較して、ビールを飲む方はパーキンソン病に罹患するリスクが低下することが分かっています。

とはいえ、アルコールの過剰摂取は中枢神経を刺激するため避けるのが望ましいです。
米国国立環境衛生科学研究所のアメリカ人を対象とした研究では、蒸留酒を飲む量が増えるほど、パーキンソン病を発症するリスクが増えることが判明しました。

健康な方でも過剰に摂取するとふらつきを生じさせるアルコールは、運動症状や姿勢反射障害などに影響を与える可能性もあります。
つまり、パーキンソン病により姿勢を保つことが難しい方は、アルコールを摂取することで、転倒のリスクが高くなると考えられます。

また、パーキンソン病が進行すると表れる自律神経障害の立ちくらみも、アルコールを摂取することによって、起こりうる症状の一つです。
アルコールにより末梢の血管が拡張すると、脳に流れ込む血液が少なくなるため、パーキンソン病の方はアルコールを飲むとより立ちくらみがひどくなるとされています。

そのため、パーキンソン病にかかったとしても、アルコール飲料を飲むことはできますが、適切な量を守らなければなりません。

パーキンソン病の方の適度な飲酒量とは?

パーキンソン病の方がお酒を飲む際は、適量を楽しむ程度に留めましょう。

そもそも、アルコールの適量とは、具体的にどのくらいなのでしょうか。
厚生労働省によると、通常のアルコール代謝能力を有する日本人を対象とした節度ある適度な飲酒量は、1日平均純アルコールで約20gと定められています。
約20gは、ビールなら500ml、清酒では1合が目安となります。

ただし、65歳以上の高齢者やアルコール代謝能力が低い方にとって、上記が必ず適量であるとは言い切れません。
ご自身・ご家族の体質や服薬などの状況を踏まえて、適切な量を把握しましょう。

(参考:厚生労働省

アルコールがパーキンソン病の薬に及ぼす影響

アルコールは、さまざまな薬の効き目に影響を与えます。
パーキンソン病の治療薬も例外ではなく、効果が想像以上に強くなったり、期待した効果が得られなかったりすることがあるため、アルコールと同時に服用することは避けましょう。

とくに、パーキンソン病の症状によって、睡眠薬や抗不安薬などの中枢神経系の薬を服用している場合には、わずかな量でも注意が必要です。
アルコールは中枢神経を抑制する作用をもっているため、併用すると過度に中枢神経が抑えられた結果、ふらつき、物忘れ、異常行動などを起こすリスクが増してしまいます。

なお、パーキンソン病の方にとって、アルコールの摂取は気分転換にもなりますので、禁酒するのではなく、治療薬に合わせた飲酒のタイミングを医師とご相談ください。

パーキンソン病の方の食事で気をつけることは?

ここまで、パーキンソン病とアルコールの関係性をお伝えしましたが、食事における注意点もあわせてご紹介します。

パーキンソン病の方に対して、推奨される特別な食事療法はなく、かつお酒以外にも制限されている飲食物はありません。
それでも、食事において意識したいポイントはいくつかあります。
以下に、パーキンソン病の方に向けた食事のポイントをまとめましたので、参考になさってください。

【パーキンソン病の方に向けた食事のポイント】

  • 栄養素の豊富な食べ物を摂取する
  • 食物繊維が多く含まれる食べ物を摂取する
  • 水分を十分に摂取する
  • 抗酸化作用のあるものを摂取する
  • 明るい色のフルーツや野菜を摂取する
  • 緑茶・紅茶・コーヒー・豆類・鶏肉・魚類を週5回以上摂取する
  • 卵黄を毎日摂取する
  • ターメリックやシナモンなどのスパイスを料理に使用する
  • 乳製品は控える

このように、栄養バランスを意識することは基本としたうえで食物繊維や水分を摂取すれば、パーキンソン病の症状に含まれる便秘の改善も期待できます。

また、パーキンソン病が進行すると、舌や喉の動きも低下し、食事が飲み込みにくくなる「嚥下障害」が起こります。
そのため、食事を簡単に飲み込むことができるよう、小さく切ったり、とろみをつけたり、舌でつぶせるほどの固さになるようにやわらかくしたりといった工夫を施しましょう。

パーキンソン病の薬を飲んでいる方であっても量やタイミングを守れば、アルコールを摂取できる

今回は、パーキンソン病とアルコールの関係性をご紹介したうえで、治療薬への影響もお伝えしました。

薬の効果が変わるだけではなく、症状が悪化するおそれもあるため、アルコールは適量を守ったうえで薬と同時に摂取することは避けましょう。
飲酒のみならず、食事においても、栄養バランスを考慮することや簡単に飲み込めるように工夫を施すことが大切です。

スーパー・コートのパーキンソン病専門住宅では、「食べる喜び」を感じていただけるよう、食材選びや色合いにこだわったお食事を提供しております。
パーキソン病の支援を実施している専門住宅へのご入居をご検討されている方は、お気軽にお問い合せください。

監修者

監修者の写真

花尾 奏一 (はなお そういち)

介護主任、講師

<資格>

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

<略歴>

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。

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