コラム
パーキンソン病は、脳内で分泌されている神経伝達物質・ドーパミンの量が減ってしまい、筋肉や認知機能を正しく調節できなくなる病気です。
難病にも指定されており、直接的な原因が特定されていない状態ですが、新しい治療法も含めていくつかの改善方法が模索されています。
この記事では、パーキンソン病の概要や特徴を踏まえて、同じような症状をきたす類似疾患について取り上げていきます。パーキンソン病か類似疾患かを見極めるポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
パーキンソン病とは、脳内のドーパミン神経細胞が減少し、ドーパミンの分泌が不足することで起こる病気です。
パーキンソン病には体のふるえや筋肉の固縮といったいくつかの特徴があり、問診や画像診断、投薬検査などを経て診断されます。
パーキンソン病は、以下の4つの症状(4大症状)を中心に、運動機能に関わる症状とそれ以外の非運動症状をきたす進行性変性疾患です。
【パーキンソン病の4大症状】
初期症状ではふるえがみられ、少しずつ動作がつたなくなっていきます。「肩こりだと思っていたが症状が良くならない」など、初期にはパーキンソン病だと判断がつきづらいケースも少なくありません。
症状が進行すると筋肉が固くなり、無動・寡動や姿勢反射障害が現れます。非運動症状として便秘や嚥下障害といった自律神経障害、睡眠障害、うつ症状や幻覚のような精神系障害を抱える方もみられます。[1]
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参考:厚生労働省 難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」
「6 パーキンソン病」
パーキンソン病と似たような症状が発現する類似疾患にも注意が必要です。
パーキンソン病とその類似疾患を含む病気は「パーキンソン症候群」と総称されており、手足のふるえや筋肉の固縮は、パーキンソン症候群のいずれかの病気に罹患している可能性があります。4つの類似疾患について確認していきましょう。
関連記事:パーキンソン病に似ている類似疾患とは?特徴と違いを解説
進行性核上性麻痺とは、脳の中の大脳や脳幹といった部分の神経細胞が減って転びやすくなったり、嚥下や会話がしにくくなったりする病気です。
パーキンソン病に似ており区別がつきにくい一方、進行性核上性麻痺はパーキンソン病の薬があまり効かない(または一時的にしか効果がない)場合が多く、症状を正しく見極める必要があります。[2]
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参考:厚生労働省 難病情報センター「進行性核上性麻痺(指定難病5)」
多系統萎縮症は、初期症状がパーキンソン病に似ていながら自律神経症状や歩行障害が出現する病気です。パーキンソン病よりも症状の進行が早く、発症から10年ほどで寝たきりの状態を経て亡くなるケースが多いといわれています。[3]
参考:厚生労働省 難病情報センター「多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)」
大脳皮質基底変性症は、パーキンソン病と同じく中高年期以降に発症してからゆっくりと進行する神経変性疾患です。初期症状では上肢のぎこちなさを感じ、筋肉が固まるような感覚とともに認知機能障害や眼球運動障害などがみられます。[4]
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参考:厚生労働省 難病情報センター「大脳皮質基底核変性症(指定難病7)」
ギランバレー症候群(GBS)は、筋力の低下をきたすものの自然治癒する炎症性多発神経障害です。弛緩性の筋力低下が上肢から下肢へと進行し、免疫グロブリン療法や血漿交換療法などを行います。
死に至る確率は低く、全症例の2%以下となっていますが、急性期を経た後も筋力低下が残存する場合があり、パーキンソン病との区別に注意が必要です。[5]
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参考:厚生労働省検疫所FORTH「ギラン・バレー症候群について(ジカウイルス感染症の関連を含む)[ファクトシート更新3]」
類似疾患のほかにも、パーキンソン病と症状が類似している病気に「レビー小体認知症」が挙げられます。
レビー小体認知症は脳内にレビー小体と呼ばれるタンパク質が蓄積し、神経細胞が破壊されるために認知症の症状が出現します。
認知機能の低下に加えて、手足のこわばり・ふるえ・姿勢反射障害といったパーキンソン病に似た症状が特徴です。
パーキンソン病か類似疾患かどうかを見極める4つのポイントを確認していきましょう。
パーキンソン病はゆっくりと進行する症状ですが、類似疾患のなかには、症状が早くに進行するものがあります。病状の進行速度を確認することで、類似疾患との違いが確認できます。
関連記事:パーキンソン病が進行する流れと注意しておきたい運動合併症
類似疾患の多くはパーキンソン病治療薬の効果が薄いため、投薬による判別が可能です。
関連記事:パーキンソン病が治る時代はやってくる?注目される2つの先進的治療
レビー小体認知症のように、早期に認知症を併発する病気は症状が起こる時期に注目することで、パーキンソン病かどうかを把握しやすくなります。
関連記事:パーキンソン病が進行する流れと注意しておきたい運動合併症
パーキンソン病の診断では、MRI脳画像検査や脳血流スペクト検査などを行います。脳内の画像診断によって、パーキンソン病に特徴的な症状を確認できます。[6]
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参考:(PDF)「Parkinson病の画像診断の進歩*」
今回は、パーキンソン病の特徴と類似疾患、そして類似疾患 を見極める方法について紹介しました。
パーキンソン病はゆっくりと運動機能障害が進行する病気ですが、同じような症状をきたす「パーキンソン症候群」との違いに注意が必要です。
パーキンソン病に似た症状の疑いがある場合は早くに病院を受診し、類似疾患の可能性も視野に入れながら専門的な検査を受け、症状ごとに適切な治療を行いましょう。
パーキンソン病の方ができるだけ生活に不安や不満を感じることなく過ごしていくためには、普段の住環境も重要です。有料老人ホームや高齢者住宅を運営しているスーパー・コートではパーキンソン病専門住宅もご用意しているので、お気軽にご相談ください。
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監修者
花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。