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パーキンソン病患者の平均寿命と治療期間が長くなると現れやすい症状

パーキンソン病患者の平均寿命と治療期間が長くなると現れやすい症状

「パーキンソン病の寿命はどれくらい?」「治療期間が長くなるとどのような症状が現れるの?」などの疑問を抱いていませんか。自身や大切な方が診断されるとこれらの点が気になるでしょう。結論を先に示すと、病気の有無で寿命が大きく変わることはありません。若年性の場合も同様です。ここでは、パーキンソン病の平均寿命を紹介するとともに治療期間が長くなると現れやすい症状などを解説しています。今後の見通しを立てたい方は参考にしてください。

パーキンソン病とは

中脳の黒質ドパミン神経が減少して、線条体と呼ばれる箇所にドパミンを供給できなくなる病気です。減少の原因ははっきりとわかっていません。現在のところ、遺伝要因と環境要因が組み合わさって起こると考えられています。遺伝要因は親から受け継いだ病気になりやすい体質、環境要因は自身を取り巻く環境といえるでしょう。
パーキンソン病で現れやすい主な症状は以下の4つです。

【症状】

  • ・安静時振戦
  • ・動作緩慢(寡動・無動)
  • ・筋強剛(筋固縮)
  • ・姿勢反射障害

これらを4大症状といいます。4大症状はすべて運動症状に分類されます。便秘や嗅覚障害など、さまざまな非運動症状が現れる点もポイントです。進行のスピードは人により異なります。

治療方法は薬物療法が基本です。不足しているドパミンを補います。具体的には、ドパミン前駆物質のL-ドパ、または受容体刺激薬のドパニンアゴニストなどを用いるケースが多いでしょう。外科的治療・デバイス治療を行うこともあります。いずれにせよ、治療の目的は症状を和らげることです。

パーキンソン病は、指定難病に定められています。したがって、一定の基準を満たす場合は、毎月の自己負担額に上限を設ける難病医療費助成制度の対象になります。ここでいう一定の基準は次の通りです。

【基準】

  • ・ホーエン・ヤール重症度3度以上
  • ・生活機能障害度2度以上

ホーエン・ヤール重症度3度は「明らかな歩行障害が現れ、バランスを崩し転倒しやすくなる。(両側性パーキンソニズム)」、生活機能障害度2度以上は「日常生活、通院に部分的介助を要する」状態です。[1]また、一定の基準に該当しない場合も、高額な医療を継続する必要があるときは医療費助成の対象になります。

関連記事:パーキンソン病とは?押さえておくべき4大症状と基本的な治療法

関連記事:パーキンソン病の重症度分類を解説!生活機能障害度Ⅰ度~Ⅲ度も確認

患者数

厚生労働省が発表している「令和2年 患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)」によると、令和2年におけるパーキンソン病の患者総数は289,000人です。患者総数は、調査日現在において継続的に医療を受けているものを表します(推計)。[3]同資料によると、平成29年における総患者数は162,000人、平成26年における総患者数は163,000人、平成23年における総患者数は141,000人です。平成23年は宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏及び福島県を除いた数値となっていますが、患者数が急増しているといえるでしょう。

難病情報センターが発表している「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数」も参考にできます。同資料によると、令和3年度末時点における受給者証所持者数(パーキンソン病)の総数は140,473人です。すべての疾患の受給者証所持者数合計が1,021,606人であるため、140,473人は約14%に相当します。難病の中でも受給者証所持者数が多い疾患と考えられます。[4]

罹患しやすい年齢

パーキンソン病は、遺伝因子と環境因子が組み合わさり発症すると考えられています。環境因子の中で特に重要と捉えられているのが加齢です。好発年齢は50~65歳と考えられています。高齢になるほど発症率・有病率とも増加する点がポイントです。65歳以上の患者数は10万人に1000人、100人に1人程度と考えられています。一方で、40歳以下で発症する方がいる点も見逃せません。このようなケースを若年性パーキンソン病といいます。
難病情報センターが発表している「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数」には、年齢階層別の受給者証所持者数も掲載されています。具体的には次の通りです。

年齢階層 受給者証所持者数
0~9歳
10~19歳 4
20~29歳 20
30~39歳 134
40~49歳 1,140
50~59歳 5,471
60~69歳 20,191
70~74歳 27,793
75歳以上 85,720

年齢とともに受給者証所持者数が増加していることがわかります。50~59歳で大きく増えはじめ、60~69歳で急増しています。[5]

パーキンソン病患者の寿命

ご自身またはご家族がパーキンソン病と診断されると寿命が気になるはずです。短命になってしまうなどはあるのでしょうか。寿命に関しては、厚生労働省が発表している資料で次のように記載されています。

生命予後は決して悪くなく、平均余命は一般より 2~3年短いだけである。

引用元:厚生労働省「6 パーキンソン病」

平均余命は、ある年齢の人が、何年、生きられるかを表します。厚生労働省が発表している「令和4年簡易生命表の概況」によると平均余命は次の通りです。[5]

年齢 男性の平均余命 女性の平均余命
40歳 41.97年 47.77年
45歳 37.20年 42.93年
50歳 32.51年 38.16年
55歳 27.97年 33.46年
60歳 23.59年 28.84年
65歳 19.44年 24.30年
70歳 15.56年 19.89年
75歳 12.04年 15.67年
80歳 8.89年 11.74年
85歳 6.20年 8.28年
90歳 4.14年 5.47年

つまり、60歳男性であれば23.59年、60歳女性であれば28.84年よりも平均余命は2~3年短いと考えられます。平均寿命(平均余命)は、全体の平均と大きく変わらないといえるでしょう。ただし、具体的な寿命は、寝たきり生活になってからの合併症などから影響を受けます。寝たきり生活にならないように、あるいは誤嚥性肺炎などを起こさないように注意が必要です。

若年性パーキンソン病の寿命

40歳以下であっても、この病気と無縁といえるわけではありません。40歳以下で発症した場合の寿命はどのように考えられているのでしょうか。若年性であっても、寿命は通常のパーキンソン病と変わらないと考えられています。つまり、平均余命は一般より 2~3年程度短いと考えられているのです。「令和4年簡易生命表の概況」を参考に、40歳以下の平均余命を紹介します。[7]

年齢 男性の平均余命 女性の平均余命
10歳 71.28年 77.30年
15歳 66.31年 72.33年
20歳 61.39年 67.39年
25歳 56.53年 62.48年
30歳 51.66年 57.56年
35歳 46.80年 52.65年
40歳 41.97年 47.77年

例えば、40歳男性であれば41.97年、40歳女性であれば47.77年よりも、平均余命は2~3年短いと考えられます。多少、短いと考えられていることは事実ですが、寿命に関してはそれほど心配ないといえるかもしれません。治療薬の開発を受けて、若年性の方も長生きできるようになっています。

パーキンソン病の症状

症状は、運動症状と非運動症状にわかれます。それぞれについて解説します。

運動症状

代表的な症状として次の4つがあげられます。それぞれの概要は次の通りです。

安静時振戦 脱力しているときに震えが現れます。動き始めると震えは止まります。最も多い初発症状と考えられています。
寡動・無動 動作の開始に時間がかかったり、動作そのものが遅くなったりします。具体的には、歩行速度が遅くなる、瞬きが少なくなる、声が小さくなるなどが考えられます。
筋強剛・筋固縮 筋肉が緊張してこわばり、動作をスムーズに行えなくなります。手や足などの関節を第三者が動かすと、ガクガクといった強い抵抗を感じます。
姿勢反射障害 身体のバランスを取りにくくなります。姿勢を変えようとしたときなどに転倒しやすくなります。発症後、数年経過してから起こります。

これらにより、細かな動作が難しくなったり、歩きにくくなったりします。ただし、すべての症状が現れるわけではありません。また、適切な治療を行えば、発症後10~15年程度は自立した生活を維持できると考えられています。

非運動症状

運動症状の前に、多彩な非運動症状が現れます。ただし、特異的な症状ではないため見過ごされるケースが少なくありません。主な症状は次の取りです。

睡眠障害 入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒やレム睡眠行動異常などが現れます。レム睡眠行動異常は、レム睡眠時に話をしたり動いたりすることです。
自律神経症状 便秘・排尿障害・起立性低血圧・発汗障害などが現れます。
認知・精神障害 意欲の低下・抑うつ・幻覚・幻視・妄想などの症状が現れます。

以上のほか、嗅覚障害や身体の痛み、しびれなどが現れることもあります。気になる症状が現れている場合は、医療機関で相談しましょう。

関連記事:パーキンソン病の進行度と症状の進行が早いときに考えられること

パーキンソン病の末期症状

病気が進行すると、さまざまな症状が現れやすくなります。具体的には、以下の症状などが現れます。

関連記事:パーキンソン病が進行する流れと注意しておきたい運動合併症

ウェアリングオフ現象

薬の持続時間が短くなって、次の服用までに効果が切れてしまうことです。効果の持続時間は、2~3時間程度といえるでしょう。服用を3~5年程度続けると現れやすくなります。効果が切れると、震えが生じる、身体を動かしにくくなる、気分が沈むなど、薬を飲んでいないときと同じ状態になってしまいます。ウェアリングオフ現象には、薬の服用回数や服用量を調整して対処します。

ジスキネジア

治療薬を服用しているにもかかわらず、自分の意思とは無関係に身体の一部が動く状態です。具体的には、繰り返し口をすぼめる、口を突き出す、手が勝手に動く、足が動いて歩きにくいなどの症状が現れます。L-ドパの血中濃度が高くなったときに不随意運動が生じるピークドーズ・ジスキネジアと血中濃度が高くなるときと低くなるときに不随意運動が生じるダイフェイジック・ジスキネジアにわかれます。頻度が高いのはピークドーズ・ジスキネジアです。治療薬の服用から5年を経過すると現れやすくなると考えられています。

他の末期症状

治療期間が長くなると他の症状も現れやすくなります。具体的には、身体の片側だけでなく両側を動かしにくくなる、身体のバランスをとれなくなって転倒する、身体の動きが制限されてうまく発音できなくなる、食べ物を食べにくくなる・飲み込みにくくなるなどが考えられるでしょう。症状が進行すると、1人で立ち上がったり歩いたりすることが難しくなり、日常生活に車椅子や介助を要するようになります。医学の進歩により、15年程度経過しても中等症にとどまるケースが増えている点も押さえておきたいポイントです。

関連記事:パーキンソン病にみられる4大症状と初期・中期・末期症状の特徴

パーキンソン病と認知症の関係

非運動症状のひとつとして認知機能の低下があげられます。認知症のリスクが高くなる点には注意が必要です。現れやすい症状として、物事を計画的に進められなくなる(遂行機能障害)、集中力が低下する(注意機能障害)、自動車をバックで停められなくなる・道具の操作方法がわからなくなる(視空間認知障害)、物忘れ(記憶障害)などが考えられます。アルツハイマー型認知症と見分けるポイントは、運動症状の有無といえるでしょう。ただし、診断は医療機関で受ける必要があります。
関連記事:パーキンソン病とうつ病は併発する?一般的なうつ病との違いと治療法

パーキンソン病の寿命は全体平均と大きく変わらない

ここでは、パーキンソン病の寿命や現れやすい症状などについて解説しました。現在のところ平均寿命は全体平均と大きく変わらないと考えられています。ただし、寝たきりになることや合併症には注意が必要です。治療期間が長くなると、さまざまな症状が現れやすくなります。信頼できる医師のもとで、適切に管理・治療することが大切です。在宅での生活が難しくなった場合は、パーキンソン病専門住宅への入居を検討してもよいでしょう。

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[1]出典:兵庫県難病相談センター「パーキンソン病」
[2]出典:厚生労働省「パーキンソン病」
[3] 出典:厚生労働省「令和2年患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)」
[4][5]出典:難病情報センター「令和3年度 衛生行政報告例 令和3年度末現在」
[6][7]出典:厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」

監修者

監修者の写真

花尾 奏一 (はなお そういち)

介護主任、講師

<資格>

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

<略歴>

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。