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パーキンソン病と遺伝の関係|関係する遺伝子と基本的な治療法

パーキンソン病と遺伝の関係|関係する遺伝子と基本的な治療法

「パーキンソン病って遺伝するの?」などの疑問を抱いていませんか。身近な方が発症して不安を抱えている方もいるでしょう。
結論から述べると、基本的には遺伝しない病気と考えられています。

しかし、例外もあります。ここでは、パーキンソン病が遺伝するか、関係する遺伝子の種類、遺伝子診断や遺伝カウンセリングの概要などを解説しています。遺伝の可能性などについて理解を深めたい方は参考にしてください。

パーキンソン病とは

中脳の黒質にある神経細胞が変性、脱落して、脳のドパミンが不足する病気です。ドパミンには、運動を調整したり意欲を高めたりする働きなどがあります。不足すると、脳の命令をうまく伝えられなくなります。パーキンソン病で現れやすい運動症状は次のとおりです。

【運動症状】

  • 安静時振戦:安静にしているときにふるえる
  • 動作緩慢:動作が遅くになる
  • 筋強剛:筋肉がこわばる
  • 姿勢反射障害:体のバランスを保ちにくくなる

次の非運動症状なども現れます。

【非運動症状】

  • 精神症状:うつ、幻覚、妄想、認知機能障害
  • 自律神経障害:便秘、排尿障害、起立性低血圧
  • 感覚障害:嗅覚障害
  • 睡眠障害:不眠、中途覚醒、ムズムズ脚症候群

現在のところ、黒質にある神経細胞が減少する理由ははっきりと分かっていません。α-シヌクレインというタンパク質の蓄積が関わっていると考えられています。

関連記事:パーキンソン病とは?押さえておくべき4大症状と基本的な治療法

直近の患者数

厚生労働省が発表している「令和2年患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)」によると、2020年におけるパーキンソン病の総患者数は28万9000人です。2017年時点の患者総数は16万2000人、2014年時点の患者総数は16万3000人でした。前回の調査から12万7000人も増加しています。

参照:厚生労働省令和2年 患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)

パーキンソン病を発症しやすい年代は50~60代です。年齢を重ねると発病しやすくなると考えられています。
65歳以上の有病率は約1%です。つまり、100人に1人がパーキンソン病を罹患していると考えられています。高齢化の進展とともに、パーキンソン病の患者数はさらに増加する恐れがあります。

パーキンソン病はどのように診断される?

診断は、原則として問診からスタートします。具体的には「どのような症状が現れているか」「いつごろから始まったか」「症状に変化はあるか」などを確認します。パーキンソン病が疑われる場合は、CT検査やMRI検査などの画像検査を実施します。画像検査の目的は、パーキンソン病とよく似た病気を除外するためです。

画像検査で異常が見つからなかった場合は、血液検査や尿検査などの臨床検査を実施します。目的は画像検査と同じです。ここでも異常が見つからなかった場合は、薬剤反応検査を行います。薬剤反応検査は、パーキンソン病の治療薬を服用して効果を確かめる検査です。効果が現れなかった場合は他の病気が疑われます。以上に加え、心臓の交感神経の状態を確かめる心筋シンチグラフィーなどの検査、家族歴がある場合は遺伝子検査を行うこともあります。

これらの結果をもとに、パーキンソン病を診断します。症状の現れ方などに個人差があるため、診断が難しいケースや診断に時間がかかるケースもあります。

パーキンソン病は遺伝するのか

基本的に遺伝しないと考えられています。ただし、家族性パーキンソン病、若年性パーキンソン病は遺伝する可能性があります。ここでは、これらについて解説します。

家族性パーキンソン病

家族性は、血のつながりのある家族に同じ病気が認められるケースを指します。パーキンソン病のなかにも家族性(遺伝性)のものがあります。全体に占める割合は5~10%です。パーキンソン病の総患者数を28万9000人と仮定すると、家族性の総患者数は1万4450人~2万8900人です。パーキンソン病の多くは非遺伝性といえるでしょう。

若年性パーキンソン病

40歳以下で発症したパーキンソン病を若年性パーキンソン病といいます。このなかには、家族性(遺伝性)パーキンソン病が含まれています。基本的な症状は、非遺伝性のパーキンソン病と大きく変わりません。ただし、安静時振戦ではなく歩行障害を初発症状とするケースが多い、進行が比較的緩やか、Lドパ製剤が効きやすいなどの特徴を備えます。

パーキンソン病の遺伝リスク

家族の誰かがパーキンソン病を発症すると、他の家族も10%~15%の確率でパーキンソン病を発症すると考えられています。パーキンソン病を伝える遺伝子は複数見つかっています。主に常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝により受け継がれる点がポイントです。

前者と関わりがある遺伝子としてPARK1があげられます。この遺伝子は、神経細胞に蓄積するα-シヌクレインの設計図です。同じく、PARK8もあげられます。この遺伝子は酵素をつくる遺伝子です。ここで起きる異常が、パーキンソン病につながります。

常染色体劣性遺伝パーキンソン病に関わる遺伝子としてPINK1があげられます。PINK1は若年性パーキンソン病にかかわる遺伝子です。父親と母親から受け継いだ遺伝子がともに変異していた場合に、遺伝性のパーキンソン病を発症します。常染色体劣性遺伝によるパーキンソン病は、進行が緩やかなどの特徴を備えます。

パーキンソン病と生活習慣の関係性

現在のところ、パーキンソン病と生活習慣の関わりははっきりと分かっていません。基本的には規則正しく健康的な生活を心がけて、ドパミンを増やすことが大切と考えられています。具体的な取り組みとして、定期的に運動する、ストレスを発散する、食生活に注意するなどがあげられます。
たとえば、次のような生活習慣を意識するとよいかもしれません。

【生活習慣の例】

  • ウォーキングやストレッチ、筋トレなどに取り組む
  • 趣味に没頭する時間を作る
  • バランスのよい食事を心がける

また、適量のカフェイン摂取がパーキンソン病の予防につながる可能性も示されています。気になる方は、1日1杯~2杯のコーヒーを飲むとよいでしょう。ただし、パーキンソン病患者は、カフェインを吸収しにくいと考えられています。

(参考:順天堂大学)

関連記事:パーキンソン病になりやすい性格と気を付けたい生活習慣

パーキンソン病の遺伝子診断やカウンセリングは受けたほうがよい?

一部の医療機関等は、パーキンソン病の遺伝子診断(遺伝子解析)、遺伝カウンセリングを実施しています。遺伝子診断のメリットは、遺伝的背景を明らかにできることと適切なサポートを受けやすくなることです。ただし、希望すれば誰でも受けられるわけではありません。原則として、主治医の紹介などが必要になります。また、解析に数カ月かかる点にも注意が必要です。

遺伝カウンセリングは、遺伝性の病気に関するカウンセリングです。主なメリットとして、遺伝に関する不安などを専門家に相談できることと正しい知識を身につけられることがあげられます。必要なサポートを受けやすくなる点も魅力です。ただし、実施している医療機関は多くありません。自由診療になる点にも注意が必要です。

遺伝性パーキンソン病に対する治療法

遺伝性であっても非遺伝性であっても治療方法は大きく変わりません。基本的には、薬物療法と運動療法を組み合わせて治療を行います。薬物療法では、ドパミンを補うLドパ製剤やドパミンの働きを補うドパミン作動薬を用いることが一般的です。運動合併症が現れた場合は、Lドパの分解を抑える薬剤やドパミンの濃度を高める薬剤などを用います。十分な効果を得られないときは、脳に電極を埋め込んで電気刺激で症状を改善する外科的療法などを検討します。

一部のパーキンソン病は遺伝が関わっている

ここでは、パーキンソン病と遺伝の関係について解説しました。基本的には、遺伝しない病気と考えられていますが、家族性パーキンソン病と若年性パーキンソン病には遺伝子の異常が関わっています。これらの場合も、基本的な治療法は変わりません。心配な方は、一部の医療機関が実施している遺伝子診断や遺伝カウンセリングを利用するとよいでしょう。また、健康的で規則正しい生活を心がけることも大切です。

スーパー・コートでは、有料老人ホーム、高齢者住宅の運営・管理を行っており、パーキンソン病専門住宅もございます。パーキンソン病について困っていることや、不安なことがある場合は、ぜひ一度ご相談ください。
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監修者

監修者の写真

花尾 奏一 (はなお そういち)

介護主任、講師

<資格>

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

<略歴>

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。