コラム
パーキンソン病は、脳から分泌されるドーパミン神経細胞が減少 するために、筋肉が動かしづらくなり日常生活に支障をきたす病気です。
症状は徐々に進行しますが、最終的に自宅での介助や介護が必要になっていき 在宅介護が難しい場合は施設への入居を検討することになります。
この記事では、パーキンソン病の方が施設に入るタイミングと入居する施設のチェックポイントについて紹介します。施設に入るための条件や注意点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
パーキンソン病の方が施設に入るタイミングは介護者の負担が大きくなったときと、患者さん自身の日常生活に支障が出たときの2つが挙げられます。 それぞれのタイミングについてチェックしていきましょう。
在宅介護では、ご家族などの同居者がパーキンソン病の方を介護する生活になりますが、起床から終身まで24時間体制で見守るのは難しい場合があります。
介護者に身体的・精神的な負担がかかるケースも多く、患者さんとの関係性が悪くなってしまう場合は、無理に介護を続けるべきではないかもしれません。
パーキンソン病の患者さんには、精神的なトラブルを抱えている方もいらっしゃいます。メンタルケアなど、介護以外の気遣いで介護者が疲れてしまう可能性も考えられるため、限界を迎えそうになったら 専門の施設への入居も考慮する必要があるでしょう。
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パーキンソン病の患者さん自身、普段通りに日常生活を送りたいという思いを持っているにも関わらず、症状の進行によって運動機能や知覚などに支障が出てしまいます。
病気に対しては早めの治療やリハビリテーションを開始するべきですが、同時に在宅介護が可能かどうかをご家族などとよく話し合いましょう。
将来的に在宅介護が難しくなることも考えて、そこまで介護 を必要としない段階から入居先を探しておくことをおすすめします。
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ここからは、パーキンソン病の方の入居先に適している施設の4つのポイントをみていきましょう。
パーキンソン病が中度以上に進行すると、歩行や動作が取りづらく自立した生活に支障をきたします。本来なら時間やタイミングを問わず自分で行動できる部分が、症状の進行とともに難しくなっていくのです。
入居先の施設は、24時間医療体制が整っているかどうかが選択のポイントになります。24時間体制でケアが受けられる環境であれば、夜間や明け方などの時間帯も心細さを感じにくく、常駐しているスタッフを通して適切なケアが受けられます。
パーキンソン病の治療は投薬に加えて、リハビリテーションを併用します。かつては症状が進行してからリハビリを加える治療方法が主流でしたが、現在では早期の段階からリハビリを重ねると良いとされています。
適度なストレッチは筋肉が固くならないように柔軟性を保つために必要です。また、パーキンソン病に罹患すると運動不足に陥りやすいため、体力と筋力の維持にもリハビリテーションが欠かせません。
歩行しやすい空間・手すりやエアロバイクなどの設備、パーキンソン病に適したリハビリテーションプログラムが整っている施設を選びましょう。
パーキンソン病には段階があり、自立して生活できる状態から少しずつ介助が必要になります。
最終的には車椅子やベッドで過ごす時間が長くなるために、入居する施設は夜間などの時間帯でも介護が受けられるかどうかを確認してください。
自立した方が多く入居している施設では、他の入居者と歩行などのスピードが合わない場合があります。ゆっくりとした動作をとっても問題なく過ごせる安全な施設を選びましょう。
介護施設は長期的に利用する場所のため、居心地の良さを重視しましょう。
入居者同士の雰囲気やスタッフの関係性が良い施設は、悩みを話したり介護を受けたりする際に安心感があり、ケアを受けやすい環境であると言えます。
近年では介護スタッフと作業療法士、作業療法士と医療従事者が連携をとる、チーム体制のケアを提供している介護施設が増えていますが、異なる立場のスタッフ間でコミュニケーションがとれているかを確認してください。
関連記事:パーキンソン病施設の選び方や入居条件・費用相場と公的支援制度
パーキンソン病の方が施設に入るためには、年齢的な制限とパーキンソン病の進行度をそれぞれ確認します。
病状の診断には「ホーエン・ヤール重症度分類 」と呼ばれる指標と、厚生労働省が定める「生活機能障害度」の2つに照らし合わせて判断されます。
ホーエン・ヤール重症度分類のうち、明らかな歩行障害がみられるⅢ度以上は、日常生活や通院に部分的な介助を必要とする生活機能障害度のⅡ度以上に該当します。パーキンソン病でこの段階に達している方は、施設への入居が可能です。
ただし、年齢が40歳に満たない方は、パーキンソン病が中度以上でも老人ホームなどの老人介護施設には入居できません。年齢が39歳に満たない方は、障がい者グループホームのように高齢者だけを対象としていない施設を検討することになります。
関連記事:パーキンソン病の原因とは?代表的な症状と日常生活での対処法
パーキンソン病の方に施設入居を勧める際、注意したいポイントは以下の3点です。
【施設に入れる際の注意点】
パーキンソン病に対応した設備やプログラム、介護サービスの有無を確認しましょう。スタッフや医療従事者にパーキンソン病への理解があるかどうかも確認します。
認知症のように、パーキンソン病以外の病気にかかった場合は入居が続けられるのかもチェックしてください。施設によっては介護医療院などへの転院を進められるため、医療体制は特に確認しておきたいポイントです。[1]
[1]
参考:(PDF)厚生労働省 介護療養型医療施設及び介護医療院(参考資料)
パーキンソン病の方が在宅介護を希望している、または施設を敬遠しているときは、どのように説得すべきなのでしょうか。
パーキンソン病は難病に指定されており、自力で完治させることが難しい病気です。特効薬というものもまだ存在していないため、罹患した場合は症状が進行しないように遅らせつつ、適切に介護や介助を受けながら生活しなければなりません。
在宅でのケアが難しく、施設に入ってほしいという旨はご家族自身が患者さんに説明すべきですが、それだけで納得されない場合は、医師やケアマネジャーなどの専門家に相談することも一つの方法です。
家族からの説得に加えて、介護施設や役所などで説明を受けることで、納得してもらえる可能性もあります。
説明だけでは納得できない患者さんには、在宅したいという意思を尊重して「訪問介護」のサービスも検討できます。
訪問介護とは、決まった日時に介護サービスを提供するスタッフが患者さんの自宅を訪問し、入浴などの介護サービスを提供する方法です。
介護施設へ入居する必要がなく、掃除・洗濯など自宅で行う介護のほかにも、通院・買い物・散髪といった外出にも付き添ってもらえます。また、介護とは別に診察や医療ケアを提供する訪問診療も行われています。
厚生労働省が発表したデータでは、特別養護老人ホーム・老人保健施設・介護療養病床・医療療養病床のいずれもパーキンソン病の患者さんに訪問診療を行っていますが、医療ケアが受けられる医療療養病床の利用割合がもっとも高くなっています。[2]
どうしても自宅で生活したいと思う患者さんには、訪問介護や訪問診療の利用がひとつの手段になるでしょう。
[2]
参考:厚生労働省 在宅患者の状況等に関するデータ「患者の診療状況について(【参考】有している傷病(複数回答))」
施設に入ってほしいと伝えることは、患者さんの中には「自宅に居てほしくないのだろうか」と不安に感じる方も。
施設への入居は、「病気を抱えていても、日々の生活をスムーズに送れるように」との配慮から提案するものです。
突然介護施設への入居 を切り出すのではなく、介護者から患者さんに対しては、「いつでも愛情や思いやりを持ち続けている」「配慮の結果として施設という選択肢もある」ことを伝えてみてください。
今回は、パーキンソン病の患者さんが施設に入るタイミングや入居の際にチェックしたいポイント、注意点などについて紹介しました。
パーキンソン病は日常生活が問題なく送れるところから、徐々に筋肉が固くなっていき不自由になっていく病気です。
根本的な治療方法や治療薬が存在しないため、最終的に車椅子や寝たきりでの介護を受けるところまで考慮したうえで、早期に施設を探すことが大切です。
施設に入れたいと提案されて戸惑う方も少なくないため、介護者の方はパーキンソン病の介護について患者さんご自身とよく話し合い、愛情や思いやりのある接し方を意識してみてください。
パーキンソン病の方ができるだけ生活に不安や不満を感じることなく過ごしていくためには、普段の住環境も重要です。有料老人ホームや高齢者住宅を運営しているスーパー・コートではパーキンソン病専門住宅もご用意しているので、お気軽にご相談ください。
パーキンソン病専門の介護施設・老人ホームならスーパー・コートへ
監修者
花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。