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若年性パーキンソン病とは?主な症状と成人期にみられるものとの違い

パーキンソン病の中には、若年で発症するものがあり、それを「若年性パーキンソン病」と呼びます。中には、気になる自覚症状があり「もしかしたら若年性パーキンソン病ではないか」と、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
そこで、どのような病気なのか知りたい方のため、若年性と成人期にみられるパーキンソン病の違いや、主な症状、治療などについて解説してきます。
この記事を読むことでどのような病気なのか見えてくるので、ぜひ参考にしてみてください。
若年性パーキンソン病とは?
若年性パーキンソン病とは、40歳以前に発症したパーキンソン病を指します。
パーキンソン病とは脳の病気の一つであり、中脳にあるドーパミン神経細胞が減少し、生成されるドーパミンが不足することでさまざまな障害が現れるのが特徴です。ドーパミンは運動機能の調節などの機能と関わっている神経伝達物質であり、主に運動機能関連の症状がみられるようになります。
なぜドーパミン神経細胞が減少するのかは明らかになっていません。ただ、遺伝や加齢による影響のほか、αシヌクレインと呼ばれるタンパク質が関係していると考えられています。
成人期にみられるパーキンソン病との違い
若年性パーキンソン病は40歳以前に発症しますが、成人期では特に50~65歳の発症率が高い点が異なります。発病率は高齢になるほど高くなっていきます。(※)
一般的に、若年発症の病気は進行が速い傾向がありますが、パーキンソン病は若年性の方が進行が遅い点が特徴です。
症状は、発症する年代によらず基本的に同じです。ただ、成人期以降に発症した場合、認知機能障害がみられることがありますが、若年性ではほとんど認められません。
(※)
若年性パーキンソン病の原因
パーキンソン病の原因はドーパミンが十分に分泌されないこととされていますが、若年性パーキンソン病では遺伝子異常が関与するケースがあります。
特に、家族の中にパーキンソン病を患っている方がいるとリスクが高まるとされています。
ただ、遺伝によって発症するリスクが特別高いとはいえません。家族がパーキンソン病を発症している場合にその遺伝子が特定されることもありますが、ほとんどのケースでは遺伝性を示しません。
若年性パーキンソン病を発症するとどのような症状が表れるのか
若年性パーキンソン病は、幅広い症状が出る病気です。ここでは、具体的にどのような症状が現れるのか代表的なものを解説していきます。
表情が乏しくなる
若年性パーキンソン病になると、会話をしている際などの表情が乏しくなることがあります。これは仮面様顔貌(かめんようがんぼう)と呼ばれる症状です。
主な原因は、表情筋が硬くなったり、ぎこちなくなったりするためにうまく動かせなくなる「固縮」にあると考えられています。
また、病気に対する不安から、気分がふさぎこみやすくなることもあります。普段からよく笑っていた方でも、不安から笑顔が減ることもあります。このような理由も重なり、若年性パーキンソン病になると表情が乏しくなる方がいます。
動作が少なくなる
動作が少なくなったり、小さくなったりするのも代表的な症状です。
これは、病気によって筋肉が緊張し、身体を動かしにくくなることが主な原因です。
たとえば、会話の際に身振り手ぶりを使わなくなることがあります。また、人によっては積極的に身体を動かすことが少なくなり、背中を丸めて静かにしている姿勢を取ることが増える傾向もあります。
筋肉や関節がこわばる
若年性パーキンソン病では、筋肉の緊張度が高まってこわばる「筋強剛」と呼ばれる症状がみられることがあります。これにより動くことが困難になることもあります。
自身ではあまり感じにくいのも特徴です。ですが、他の人が患者さんの腕を曲げたり伸ばしたりしようとした際に抵抗がみられます。
歯車のように動いたり止まったりを繰り返す規則的な動きがみられる場合は「歯車現象」、継続してこわばりが続く場合は「鉛管(えんかん)現象」と呼ばれるものです。
また、筋肉がこわばっている状態が長く続くと、徐々に筋肉がゆるんだり縮んだりする際のバランスが取れなくなり、関節のこわばりにつながってしまうこともあります。
筋肉や関節は、身体を動かしたり支えたりするうえで重要な役割を果たします。そのため、筋肉や関節のこわばりが強くなると、日常生活に大きな影響を与えやすくなります。
身体をうまく動かせなくなり、病院を受診した結果、若年性パーキンソン病と診断される方も少なくありません。
手足が震える
若年性パーキンソン病における代表的な症状の一つとして、安静時振戦が挙げられます。
これは、手足の震えのことです。
椅子に座って安静にしているときなど、力を入れていない部分が震えることがあります。
また、震えが発生している部位を動かすと震えが小さくなるのも特徴です。
ただ、症状の現れ方は人によって大きく異なります。薬で治療をしても震えが強く出てしまう方もいますが、こういった場合は手術による治療を行うことで改善することもあります。震えが大きく、日常生活に影響している場合などは医師に相談してみましょう。
転倒することが増える
若年性パーキンソン病にかかった患者さんの多くが経験するのが、転倒です。これには、病気によって筋肉や関節がこわばる、動作が少なくなるといった理由のほか、姿勢反射障害と呼ばれるものが関係しています。
姿勢反射障害とは、身体が傾いた際、うまく姿勢を立て直すことができなくなる障害のことです。一般的には病気を発症してからすぐではなく、ある程度を進行してから姿勢反射障害がみられるようになります。
また、症状によっては、ただ座っているときでも正常な姿勢を保つことが難しくなり、姿勢が斜めに傾いたり、前後に倒れたりすることもあります。
日常生活の中で姿勢に関する不調を感じた場合は、一度医師の診察を受けるとよいでしょう。
病院での診断では、医師が患者さんの方を後から引っ張り、きちんと体勢を崩さないための動作が取れるかを調べます。
転倒は骨折のリスクを高めるため、注意が必要です。転倒による骨折が原因で寝たきりになったり、体力が著しく低下してしまったりすることもあります。
若年性パーキンソン病は治るのか
成人期以降に発生するパーキンソン病と同様に、若年性パーキンソン病を根本的に治す方法はまだ見つかっていません。現在、多くの治療法に関する研究が進められています。
ただ、症状を緩和するために効果的な方法はあるので、病院で相談しながら取り組みましょう。
また、生活習慣を見直すことも大切です。たとえば、バランスの取れた食事を取るように意識していきましょう。揚げ物が多い場合は減らしたり、野菜が不足している場合は野菜の摂取量を増やしたりすることも重要です。
基本的に「健康的」とされる食生活を送るようにしてみてください。
運動も取り入れましょう。パーキンソン病は筋肉や関節の動きに影響することから、進行していくと徐々に身体を動かすのが難しくなってしまうことがあります。そのため、体力や筋力が低下しないように運動を実践していくことが重要です。
基本的に、パーキンソン病にとって良い生活といえば、健康的な生活といえます。日常生活の中で問題を感じていることがあれば、まずはその見直しから始めましょう。
現在、若年性パーキンソン病を根本的に治す方法は確立されていません。しかし、適切な対処によって進行を遅らせることで、将来的に有効な治療法が確立された際に、効果的な治療を受ける可能性が高まります。
若年性パーキンソン病の治療法
若年性パーキンソン病の症状を抑えたり、緩和したりするために効果的なのが、薬物療法とリハビリです。症状が重い場合は手術を行うこともありますが、ここではその前に検討したい薬物療法とリハビリについて紹介します。
薬物療法
パーキンソン病はドーパミンが不足することによって起こる障害であるため、主にドーパミンを補う目的で行われるのが薬物療法です。
腸から吸収される「L-ドパ(レボドパ)製剤」と呼ばれる治療薬が使用されます。他にもさまざまな治療薬があり、それぞれの症状に応じて処方されます。
リハビリ
薬物療法と組み合わせて行っていきたいのが、リハビリです。パーキンソン病は関節や筋肉を動かしにくくなってしまうことがあるため、専門のリハビリテーションセラピストの指導を受けて進めていくことになります。
たとえば、ウォーキングやストレッチ、バランス改善を目的としたエクササイズなどが挙げられます。こちらも薬物療法と同じく、それぞれの症状に応じて行っていきます。
パーキンソン病は、直接的に命を落とす原因になるものではありません。ですが、症状が進行することで少しずつ生活の質が低下していきます。生活の質をできるだけ維持するためにも、早期からリハビリを始めることが重要です。
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気になる症状があればまずは医師に相談を
いかがだったでしょうか。若年性パーキンソン病とは何か、どのような症状が現れるのかなどについて紹介しました。治療法についてもご理解いただけたかと思います。
若年性パーキンソン病の疑いがある場合は、早めに医師に相談しましょう。
パーキンソン病は進行性の病気であるため、将来を考えると生活に不安を感じることもあるでしょう。パーキンソン病などの神経難病の方に特化した介護施設を運営しているスーパー・コートでは、運動機能維持や生活の質を向上させるための取り組みにも力を入れています。ぜひご相談ください。
監修者

花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。