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難病指定されているパーキンソン病の特徴・症状と自身でできる対処法

病気の中には、国から指定難病に分類されているものがあります。パーキンソン病もその一つです。
本記事では、パーキンソン病について調べている方に向けて、病気の概要や特徴、指定難病とはなにかについて解説します。
この記事を読むことでパーキンソン病がどのような難病なのかわかるようになるので、ぜひご覧ください。
指定難病の一つでもあるパーキンソン病とは?
パーキンソン病は、脳の働きに異常が生じることで、体を思うように動かしにくくなる病気です。
中脳にあるドーパミン神経細胞が減少すると、体を動かすために必要なドーパミンという物質が不足し、パーキンソン病を発症します。
ドーパミンは、運動機能の調整や意欲・幸福感・学習などと関係している神経伝達物質です。
このドーパミンが不足すると、手足が思うように動かなくなったり、歩くスピードが遅くなったりすることがあります。
また、日常生活のさまざまな動作に支障をきたすこともあります。
現在のところ、パーキンソン病の根本的な治療法は確立されていません。
発症の原因として、加齢や遺伝、αシヌクレインというタンパク質の蓄積が関係していると考えられていますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。
そのため、病気の進行を抑えるために薬物療法や手術療法が行われています。
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パーキンソン病の特徴
パーキンソン病は進行性の病気であり、ゆっくり進行するのが特徴です。ただし、進行速度には個人差があり、現れる症状の種類や程度も人によって異なります。
パーキンソン病の症状は多岐にわたり、初期症状が他の病気と似ている場合もあるため、特定の症状だけでパーキンソン病と診断するのは難しいことがあります。
パーキンソン病の症状
パーキンソン病は、実にさまざまな症状が出ることで知られています。人によって症状やその程度に差があることから、一人ひとりに合わせた治療を行っていかなければなりません。
ここでは、パーキンソン病の代表的な症状を7つ解説します。
すくみ足
歩いている最中や、歩き出そうとした際、方向転換をしようとした際などに足の裏が地面に張り付いたような感覚になって足を踏み出せなくなるのが、すくみ足です。突然すくみ足の症状が出てしまうと、体勢を崩しやすくなり、転倒のリスクが高まります。
症状は数秒から数分続くのですが、突然発生することから、なかなか予想や予防ができません。
関節のこわばり
パーキンソン病が進行しドーパミンが減少すると、身体の動きを調整するための脳の指令が筋肉にうまく伝わらなくなります。その影響で筋肉を適切に緩めることができず、常に緊張が続くため、動作がぎこちなくなります。これによって発生するのが、関節のこわばりです。
関節にこわばりが発生している状況だと思うように身体を動かせません。関節の可動域が狭くなると、日常生活で不便さを感じるようになるほか、ケガのリスクも高まります。
転倒
パーキンソン病では、歩行障害や姿勢の不安定さが生じるため、転倒しやすくなります。特に、すくみ足や身体が傾いた際にうまくバランスが取れない姿勢反射障害などの症状があると、身体のバランスを崩しやすくなり、転倒のリスクが高まります。
無動
無動とは、動きが鈍くなり、素早い動作ができなくなる症状のことです。全体的に動作が遅くなることから、何をするにしても時間がかかってしまうこともあります。
他にも、動きや声、書く文字が小さくなったり、歩幅が小さくなったりするのも代表的な無動の症状です。無表情になったりしゃべり方に抑揚がなくなったりすることもあるため、話し方が変わったと感じることがあるかもしれません。
精神症状
パーキンソン病というと、身体の運動機能に問題が起こる病気というイメージを持っている方もいるでしょう。しかし、精神的な異常を引き起こすことがあります。
たとえば、うつや不安などが挙げられます。何をするにも気力がなくなるほか、動くのが面倒になったり、周囲への関心が薄れてしまったりすることも珍しくありません。
場合によっては、幻覚や錯覚、妄想などの症状が現れることもあります。うつなどの症状を感じて精神科を受診したところ、パーキンソン病であることがわかった方もいるようです。
自律神経症状
自律神経とは、人の意思に関係なく働く神経のことです。生命を維持するために欠かせない呼吸や体温、血圧、代謝などの生命活動を維持するために働き続けています。
緊張時に働く交感神経と、リラックス時に働く副交感神経の2つがあるのですが、これらのバランスが取れなくなることで、多くの症状が発生します。
自律神経症状として現れることがあるのが、便秘、めまい、冷え、むくみ、立ちくらみ、尿漏れなどの症状です。ただ、なかなか「便秘だからパーキンソン病かもしれない」と結びつけるのは難しく、自律神経症状だけでパーキンソン病に気づくのは難しいといえます。
認知障害
認知機能に障害が現れることがあります。たとえば、認知症の症状が現れたり、複数の物事を同時に進めるのが難しくなったりすることがあります。
認知機能は、素早く適切な判断をしたり、集中したりするためにも重要なものです。そのため、認知障害が起こると正しい判断ができなくなったり、集中力が低下したりすることがあります。
パーキンソン病が難病指定されているわけ
国が指定する難病とは、完治が困難な病気のことを指します。
医療水準の向上により、治療が可能になった病気は難病の指定から外されます。
しかし、パーキンソン病は根本治療となる明確な治療方法が確立されていないのが現状です。そのため、難病として指定されています。
難病指定を受けるための重症度の基準
詳しくは後述しますが、難病指定により医療費助成の対象となるなどの支援を受けることができます。しかし、パーキンソン病と診断されたすべての人が対象となるわけではありません。
指定難病は、それぞれの疾病に確立された診断基準や特性に応じて重症度分類が設定されています。
パーキンソン病の場合は、以下の「ホーエン・ヤール重症度分類」と「生活機能障害度」によって重症度が判別されます。
【ホーエン・ヤール重症度分類】
- I度:症状が片方の手足のみに出ている
- II度:症状が両方の手足に出ている
- III度:姿勢反射障害が加わっている
- IV度:日常生活に部分的な介助を必要とする
- V度:車椅子、または寝たきりの生活
【厚生労働省の生活機能障害度分類】
- I度:日常生活・通院時にほとんど介助を要さない
- II度:日常生活・通院時に介助を要する
- III度:日常生活に全面的な介助を要し、歩行・起立ができない
難病指定を受けるための条件は、ホーエン・ヤール重症度分類III度以上で、生活機能障害度分類II度以上です。
パーキンソン病で難病指定を受けるとどのようなことがある?
症状が重くなり、パーキンソン病で難病指定を受けた場合はどのようなことがあるのでしょうか。
難病指定を受けると、医療費助成の対象になることや、最先端の治療を受けられることが挙げられます。
医療費助成の対象となる
難病は根本治療となる明確な治療法が確立されていないこともあり、長期間にわたって療養を受けなければならないこともあります。また、治療に高額な費用がかかってしまうことも少なくありません。
そのことから、どうしても高くついてしまうのが医療費です。そこで、難病指定された場合は医療費助成制度が利用できるようになっています。
これは難病法によって指定された指定難病の治療法を確立する目的で難病患者さんのデータ収集を行うほか、上記療養にかかる医療費を支援することを目的とした制度です。
自動的に認められるものではなく、申請を行わなければなりません。申請が認められたあとはパーキンソン病に関連した医療費が医療費補助の対象となります。
通常、国民健康保険や健康保険組合加入者の場合、一般的な医療負担は3割ですが、医療費助成により2割に軽減されます。
また、月ごとに所得状況に応じた自己負担上限額が設定されており、その負担額を超える治療費を支払う必要がなくなります。
治療費の負担が大きいためになかなか前向きに治療を検討できなかった方にとっても、大きな後押しといえるでしょう。
最先端の治療を受けられる
難病指定を受けて医療費助成の対象となれば、一般的にはなかなか検討できないような高額な最先端治療を受けることも検討しやすくなります。
また、難病指定を受けた場合は、パーキンソン病を専門的に扱う医療機関や専門医に診てもらいやすくなります。これは最先端の治療を受けやすくなる理由の一つです。
パーキンソン病で難病指定を受けた際に活用できる支援制度
パーキンソン病で難病指定を受けたあとは、難病医療費助成制度や介護保険制度を活用できるようになります。それぞれどのような制度なのか確認しておきましょう。
難病医療費助成制度
難病医療費助成制度とは、医療費負担の軽減を目的とした制度です。ホーエン・ヤール重症度分類III度以上で、生活機能障害度分類II度以上での方を対象としています。
申請に必要な書類はお住まいの地域によって異なることがあるので、事前に保健所に問い合わせておくと良いでしょう。一般的には以下のような書類の提出が必要になります。(※)
【申請に必要な書類】
- 診断書(臨床調査個人票)
- 申請書(指定難病医療費支給認定用)
- 公的医療保険の被保険者証のコピー
- 市町村民税の課税状況の確認書類
- 世帯全員の住民票の写し
あらかじめ難病指定医に診断書の記載を依頼し、それを添えて申請手続きを行うことになります。提出された書類を元に審査が行われ、問題がなければ認定の通知が送られてきます。
(※)
参考:(PDF)厚生労働省:指定難病と診断された皆さまへ[PDF]
介護保険制度
通常の介護サービスでは、65歳以上の人が第1号被保険者として保険の対象となります。一方、パーキンソン病を患ってしまった40歳以上65歳未満の人については、第2号被保険者として介護認定を受けることが可能です。
認定を受けたあとは、第1号被保険者と同様に介護保険サービスが利用できるようになります。紹介したようにパーキンソン病で難病指定を受けるためには、ホーエン・ヤール重症度分類III度以上、かつ生活機能障害度分類II度以上である必要があります。
ホーエン・ヤール重症度分類がIやIIであるために難病指定されなかった場合でも、介護保険制度をうまく活用していきましょう。
お住まいの市区町村の窓口で要介護認定を受ける必要があります。必要な書類は時期によって異なるので窓口にご確認ください。
ご自身でもできるパーキンソン病の対処法
パーキンソン病と診断された場合、基本的に病院に通院しながら治療を続けることになります。ただ、日常生活の中でも自身でできる対処法がいくつかあるので、実践していきましょう。
まず、運動を行い、身体能力を維持していくこと、たとえば適度な運動を取り入れ、筋肉を強化することが大切です。
身体の柔軟性や筋力を高めることにより将来的に寝たきりになるのを防止する効果も期待できるため、積極的に運動を取り入れていきましょう。
また、食生活の質を高めることも重要です。何か特定のものを食べてはいけないということはありませんが、バランスのとれた食事を心がけることは健康のためにも必要といえます。
揚げ物や肉に偏らず、野菜や魚を積極的に取り入れるよう心がけましょう。
病気の進行により、身体のバランスを取ることが難しくなる場合があります。転倒してしまう可能性も考えられるので、可能であれば家に手すりを設置したり、小さな段差を解消したりするなどの対策を取ることをご検討ください。
パーキンソン病は進行性の病気であり、長い期間をかけて症状が変化することもあります。症状に応じた対応が必要となるため、定期的に受診することを忘れないようにしてください。
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パーキンソン病は難病の一つ
いかがだったでしょうか。
難病の一つであるパーキンソン病の概要や、症状などについて解説しました。
なぜ難病指定されているのかなどもご理解いただけたかと思います。
難病指定を受けることで利用できる制度が増えるため、症状が進行した場合は申請を検討しましょう。
パーキンソン病は進行すると、将来的に生活が困難になる可能性があります。有料老人ホームスーパー・コートでは、パーキンソン病専門住宅を運営し、サポートを提供しています。
介護ケアに長けたスタッフがお一人おひとりに最適な介護方針を判断してサービスを提供しているので、一度ご相談ください。
監修者

花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。