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パーキンソン病が治る時代はやってくる?注目される2つの先進的治療

パーキンソン病が治る時代はやってくる?注目される2つの先進的治療

パーキンソン病は軽い症状から徐々に進行することで知られる病気です。特定難病にも認定されており、将来的に介護が必要になる可能性もあることから、症状を正しく知って早期に治療を開始する必要があります。

この記事では、パーキンソン病に関して概要や原因、重症度と診断方法について紹介します。パーキンソン病が治る時代はやってくるのか、鍵となる治療や症状を緩和させるためにできることも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、脳内で分泌される神経伝達物質やドーパミンの量が減るために、運動調節機能に障害が発生する病気です。

通常、ドーパミンの作用によって筋肉の動きや精神・認知などが正しく調節されますが、パーキンソン病ではドーパミンの量が減るために、身体症状を中心にさまざまな変化が現れます。

発症後すぐに大きな変化が出るものではなく、何年もの時間をかけてゆっくりと進行していくのが一般的ですが、症状の進行がやや早い人もいます。

発症する原因

パーキンソン病の発症については、はっきりとした原因はありません。遺伝的要因がある場合や脳炎の後遺症としてパーキンソン病を発症したケースもみられますが、ごく少数の例にとどまっています。

ただし、加齢にあわせて罹患者の数が増えていくことから、加齢が発症リスクの一部と考えられています。

パーキンソン病の直接の発症理由は、脳内でのドーパミンの減少です。ドーパミンは脳の「黒質」と呼ばれる部分にあるドーパミン神経で生成されており、ドーパミンができると運動機能を調整する「綿条体」という場所に送られていきますが、量が少ないと運動調節が正しく行われなくなります。

代表的な4大症状

パーキンソン病と判定される「4大症状」は、以下の4つです。

【パーキンソン病の症状】

  • ・安静時振戦:止まっているときにふるえが出る
  • ・筋強剛(筋固縮):筋肉が固くなり手足が曲げにくくなる
  • ・無動・寡動:動き出す際に時間がかかり動作が鈍くなる
  • ・姿勢反射障害:体のバランスが乱れ姿勢や体勢を保ちにくくなる

パーキンソン病は、何もしていない状態でのふるえや筋肉の固縮が起こる病気です。

筋肉の挙動が通常のようにいかなくなるため、動作に時間がかかったりまったく動けなかったりといったトラブルが起こります。重心を移動して体のバランスをとる能力も低下し、体が傾いたときにそのまま転びやすくなります。

重症度の度合い

パーキンソン病に罹患した後は、通院にあわせて進行度を調べます。「ホーエン・ヤール重症度分類」と呼ばれる判定方法を使い、その他の所見ともあわせて進行度をチェックします。

ホーエン・ヤール重症度分類では、パーキンソニズム(※)の程度を5段階で示しています。さらに厚生労働省による「生活機能障害度」を重症度分類に当てはめています。

ゼロ度 パーキンソニズムなし
Ⅰ度 一側性パーキンソニズム 体の片側だけに手のふるえや筋肉のこわばりがある
Ⅱ度 両側性パーキンソニズム 両方の体に手足のふるえや筋肉のこわばりがある
Ⅲ度 軽~中度パーキンソニズム すくみ足がみられ転びやすくなる
Ⅳ度 高度パーキンソニズム 重篤な身体機能の障害を呈している
Ⅴ度 介助なしでは車椅子またはベッドに寝たきり 立つことが不可能で、介助が必要である
ホーエン・ヤール重症度分類 生活機能障害度
Ⅰ度 Ⅰ度
Ⅱ度 Ⅰ度
Ⅲ度 Ⅱ度
Ⅳ度 Ⅱ度
Ⅴ度 Ⅲ度

パーキンソン病の症状がきわめて軽度なホーエン・ヤールⅠ度から多少の症状はあるが自立して生活できるⅡ度までは、生活機能障害度もⅠ度ともっとも軽度です。

ホーエン・ヤールⅢ度からⅣ度は姿勢反射障害が始まるなど、介助が必要になるため生活機能障害度もⅡ度に該当し、ホーエン・ヤールⅤ度に至ると車椅子や寝たきりの状態になるため、生活機能障害度もⅢ度に該当します。

※パーキンソン病に似ている病気の集合体、またはパーキンソン病とよく似た運動障害症状全般を指す

診断方法

パーキンソン病の診断は、よく似た疾患と区別するためにいくつかの段階を経て決定されます。具体的には、以下の流れに沿って診断が行われます。

【パーキンソン病の診断方法】

  • ・問診・診察
  • ・画像診断
  • ・臨床検査
  • ・薬剤反応検査
  • ・MIBG検査

はじめに神経内科で問診や診察を行い、既往症や具体的な症状の有無・程度を確認します。次に画像診断として、CTやMRIを使い異常を調べます。

画像診断で異常がないと判断されれば、尿検査や血液検査といった臨床検査で異常がないかを調べ、異常がみられなければ薬剤反応検査(MIBG検査/心筋シンチグラフィー検査)でパーキンソン病の薬剤を服用し、効果を確認します。

薬剤の効果がみられた場合は、パーキンソン病と診断されます。薬剤への反応が判然としないときには、何度か検査を実施する場合もあります。

治療方法

パーキンソン病はゆっくりとした速度で進行する病気です。Ⅰ度の方であれば5年や10年をかけてⅡ度、Ⅲ度と進行していくため、症状が軽いうちに治療をスタートすることが大切です。

具体的には、投薬とリハビリテーションを組み合わせた治療を続けていき、患者さんごとに症状をみながら薬の種類や量を調節します。リハビリテーションはパーキンソン病の症状にあわせたメニューを組んで、作業療法士などが実施します。

関連記事:パーキンソン病の進行度と症状の進行が早いときに考えられること

パーキンソン病が治る時代はくる?

パーキンソン病は2023年時点で難病に認定されており、直接的な発症原因も判明していないため、予防や完治が難しい状況です。
現在行われている治療法はいずれも予防や対症療法であり、根本的に完治させることはできません。

運動合併症や薬剤の副作用といった問題もあり、投薬後の状況をみながら治療を続けなくてはなりませんが、遺伝子治療やiPS細胞を使った治療が登場し、順次試験や実験が進められています。

パーキンソン病が治る時代の鍵となる治療

パーキンソン病が完治するために、「遺伝子治療」「iPS細胞を利用した治療」が注目されています。それぞれの治療方法、治療に期待できることを確認していきましょう。

①遺伝子治療

遺伝子治療とは、異常な配列をもつDNAに対し、正常な配列のDNAを追加する治療法です。
対象となる病気は、遺伝子欠損症・癌(がん)・神経性疾患・AIDS・閉塞性動脈硬化症・狭心症・心筋梗塞・パーキンソン病などです。

遺伝子治療は、遺伝性のパーキンソン病に対して対処できる可能性があるとして期待されています。

遺伝子治療には2つの方法があり、いずれも患者さんの体にある細胞を扱います。

対象となる細胞を採取し、遺伝子導入と呼ばれる処置を加えてから再度体に戻す「体外法」と、患者さんの体内で直接遺伝子導入が起こるようにする「体内法」です。

今までは成功率が低い体内法に代わって体外法が用いられてきましたが、「アデノ随伴ウイルス」と呼ばれるウイルスが運び屋の役割を担えることがわかり、脳の神経細胞の中で遺伝子を発現できるようになりました。

体内法は外科治療と注入治療を組み合わせて行います。全身麻酔をかけ、眠った状態で頭の骨を固定し、CT・MRI撮影によって注射場所を決めてから、頭の骨に穴を開けて1つの穴から2回方向を変えて注射をします。[1]

[1]
参考:厚生労働省 臨床研究「パーキンソン病遺伝子治療参加のしおり」

パーキンソン病における遺伝子治療の方法

パーキンソン病における遺伝子治療では、「ドパ脱炭酸酵素」を作り出す遺伝子を脳に与えます。

ドパ脱灰酸酵素とは、レボドパ(L-ドパ)をドーパミンに変化させるはたらきをもつ酵素です。

投薬治療には「レボドパ(L-ドパ)製剤」という薬が使われていますが、パーキンソン病が進行すると薬の効き目が低下するため、遺伝子治療では脳の中で直接ドーパミンを生成し、運動症状の改善を目指します。

ただし、遺伝子治療は不随意運動が出現するリスクもあり、成功例の少ない方法のため、今後さらに精度を高めていく必要があります。

②iPS細胞を利用した治療

iPS細胞は「人工多能性幹細胞」とも呼ばれており、体の細胞に特定の遺伝子を導入することで作られる細胞です。

iPS細胞はあらゆる種類の細胞に変化でき、秩序正しく増え続ける能力があるために、さまざまな治療に応用されてきました。

パーキンソン病の治療は投薬やリハビリテーションが主流でしたが、近年このiPS細胞を使った新たな治療法が注目されています。
万能細胞としても知られるiPS細胞は、遺伝子治療と異なる手法として開発され、現在では医師主導の治験も進められています。

iPS細胞とは

iPS細胞は皮膚や血液などの体細胞に因子を導入して培養することで、組織・臓器の細胞に分化できる細胞です。

遺伝子治療では運び屋であるアデノ随伴ウイルスの力を借りて酵素を作り出す遺伝子を脳内に注入しますが、iPS細胞治療では体細胞から作り出した前駆細胞を直接移植します。

2018年10月には京都大学が世界で初めてiPS細胞から誘導したドーパミン神経前駆細胞を脳内に移植する治験が行われ、7例を2年間にわたって観察しました。

すでに安全性と有効性が確認されており、健常人ドナーから得られた健康な体細胞を用いたストックを使って治験が進められています。

iPS細胞を利用した治療で期待できること

2018年の治験で得られた成果として、投薬治療によって症状の改善・緩和がみられなかった患者さんにドーパミン神経細胞を移植し、2年間観察したところ、行動解析について症状の改善が確認できました。

当初はドーパミンの補充を目的とした治療のため、ドーパミンに対する反応が失われた方は対象となっていませんでした。

しかし、現在では多くの大学病院や研究機関がiPS細胞治療に参加し、数百名以上のパーキンソン病患者から細胞を採取し、順次作成したiPS細胞を使って解析を進めています。

2023年12月には米国カリフォルニア大学サンディエゴ校がパーキンソン病の治験をスタートしており、世界中から症例が集まることによって、本格的な実用化が進むと期待されています。[2]

[2]
参考:京都大学 iPS細胞研究所「米国における「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療」に関する医師主導治験開始のお知らせ」

パーキンソン病の症状を緩和させるためにご自身でできること

パーキンソン病の症状を緩和させるために自身でできる3つのポイントを確認していきましょう。

運動やリハビリに取り組む

パーキンソン病では運動機能が低下するために、筋肉が固まってしまいます。運動・エクササイズ・リハビリテーションに取り組み、体の柔軟性を維持していくことが大切です。

食生活を見直す

パーキンソン病は食事療法だけで治せない病気ですが、体の重心を保つために体重を増やしすぎない心掛けが大切です。また、ドーパミンの分泌量が低下すると便秘をきたしやすいため、水分と食物繊維の摂取も定期的に行う必要があります。

楽しい毎日を過ごす

パーキンソン病の患者さんは、気分の変調・うつ症状といったメンタルの問題を抱える方もいらっしゃいます。

気持ちが落ち込むと外出をしたくなくなり、運動不足から筋肉が固くなってしまうケースもみられるため、外出などを通して明るく毎日を過ごすようにしましょう。

症状に合わせた治療と日常生活を組み合わせて予防する

今回は、パーキンソン病の発症原因や進行度、遺伝子治療やiPS細胞を使った再生医療について紹介しました。

なぜパーキンソン病を発症するのかといった根本的な原因ははっきりと解明されていないものの、ドーパミンが減ることでパーキンソン病を発症するというメカニズムが判明しているため、将来的に予後を良好にするための治療法が確立される可能性があります。

患者さん自身も普段の生活の中でストレッチや筋力トレーニングを心掛け、明るい気持ちで前向きに治療や予防に取り組んでいくことで、効率的に症状の進行を抑えられます。

スーパー・コートではパーキンソン病専門住宅を運営しており、ご入居者の運動機能の維持や生活の質の向上を目指した取り組みにも力を入れているので、ぜひご相談ください。

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監修者

監修者の写真

花尾 奏一 (はなお そういち)

介護主任、講師

<資格>

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

<略歴>

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。