コラム
「親が施設に入ったら住民票を移す必要はあるの?」と、疑問に思いませんか。
老人ホームに入る際には、住民票を異動させるのが一般的です。
しかし義務ではないので、移した場合のメリットやデメリットを知ったうえで、判断するとよいでしょう。
この記事では、老人ホームの施設へ住民票を移す手続き方法や利用できる制度について解説します。
知っておくと金銭面でのリスクを避けられるので、ぜひ参考にしてください。
目次
親が老人ホームへ入居するときには、転居前の住所と変わるため、基本的には住民票を移します。
しかし正当な理由があれば必ずしも住所変更しなくても問題はなく、移すタイミングは決められていません。
とくに短期間の施設入居などの場合は住民票を移す必要はないのですが、移していないと大切な郵便物を受け取れないという問題も。
そんな場合には郵便局に転居届を出しておくと、自動的に施設へ届けてもらえます。
住民票を移すかどうかはメリットやデメリットを比較して、適切に判断する必要があるでしょう。
また次の表からもわかるように、住所変更が必要な地域密着型施設へ入所の場合は、施設のある自治体の住民票が必要になります。
住所変更 | 施設の種類 | |
地域密着型施設 | 必要 | ✓認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム) ✓地域密着型特定施設入居者生活介護 ✓地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 |
上記以外 | 任意 | ✓介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) ✓介護老人保健施設 ✓軽費老人ホーム(ケアハウス) ✓有料老人ホーム ✓介護療養型施設 ✓民間のグループホームや高齢者住宅など |
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老人ホーム入居時に住民票を移すのが面倒と考える方もいますが、実際にはメリットもあります。
ここでは3つのメリットについて解説しましょう。
住民票を老人ホームへ移しておくと、郵便物が届きます。
そのため家族が老人ホームまで届ける必要がなくなり、最短で本人のもとに届けられるでしょう。
また住民票を老人ホームに移しておくことで自治体からの重要な通知や書類などを見逃さずに、提出遅れを防げるのです。
介護保険関係の手続きなら、施設と家族で連絡を取りながらの対応も期待できます。
住民票を異動すれば、重要な郵便物も見逃さずに対応しやすくなるでしょう。
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介護保険料は、市町村の高齢者数や要介護者数、介護サービスの費用によって地域差があります。
そのため入居する老人ホームによっては、介護保険料が今までよりも下がる場合があるのです。
さらには、受けられる介護保険サービスの内容が充実することも。
国民健康保険料も安いかもしれません。
またこれらの保険料は多くの金額を納めたからと言って、よりサービスを受けられるというものでもありません。
そのためより金額の低い自治体にある老人ホームを選ぶかどうかも、施設選びの大きなポイントです。
これまでお伝えしてきた点を踏まえて施設を検討する際には、転居先にある自治体の国民健康保険料や介護保険料を確認しておきましょう。
介護保険制度のなかには、地域密着型サービスがあります。
これは高齢者が住み慣れた場所で、介護が必要になっても住み続けられるようにするための介護サービスです。
住民票があると、地域密着型サービスや居住している地域の公共施設の利用料を割引してもらえるなどの利点があります。
頻繁に介護保険サービスを利用するのであれば、住民票を移すのがおすすめです。
老人ホームへ入居時の住民票の異動については、デメリットを抑えておくことも大切です。
知っておいてほしい3つのデメリットを紹介します。
自治体によって介護保険料が違うため、施設へ入居すると支払う保険料が高くなる可能性もあります。
近頃は現役世代の減少が進んでいるとともに高齢者が増加しており、社会保障制度が機能しているのかどうかが問題です。
そのため、介護保険サービスの自己負担額に影響する可能性があります。
介護保険料の軽減を優先するならば、自治体による違いの比較や、住所地特例制度の活用を検討してみましょう。
制度については、次の章で解説しているのでぜひ参考にしてください。
住民票の異動は、施設のある役所で行います。
役所は平日の日中に開いているので、家族が届け出る場合は都合をつけて出向く必要も。
その際に委任状や本人確認書類などが必要となりますが、市町村によって違いがあるので、前もって必要な書類を確かめておきましょう。
また金融や役所などの関係で住所変更する必要があり、手間がかかります。
住所変更に必要な手続きは以下のとおりです。
引っ越し時に、住民票の住所を変えてから転送の申込をすると、ほぼすべての郵便物が施設に届きます。
この点はメリットになりますが、個人情報保護やプライバシーの観点から見るとデメリットにも。
友人からの手紙や生命保険会社からの書類、銀行からのお知らせなど見られたくない情報が、第三者の目についてしまいます。
そこで施設側より郵便物について、話を聞いておきましょう。
「役所からであれば、内容を確認してから家族に連絡する」
「役所からのものでなければ、家族に伝えたうえで保管しておく」
これらを前もって決めておけば、余計な心配や不安を抱えずにすむはずです。
自治体の異なる現住所から施設に引っ越す際、今までよりも高い介護保険料になってしまうケースもあります。
こうした事態に有効なのが住所地特例制度です。
この章では、同制度の対象となる人や施設について解説します。
住所地特例制度とは、老人ホームへ入居して住民票の住所変更をする前の自治体が保険者になる制度です。
住所地特例制度を利用すれば、介護保険料や給付は引っ越し以前と変わりません。
たとえば、今までの介護保険料より施設のある自治体のほうが高かった場合、引っ越し後に住民票を異動しても前の自治体に払うため金額はそのままです。
なお同制度を利用するには、後に述べるさまざまな条件があるので、該当するのかどうかご確認ください。
要介護認定を受けていなくても、住所地特例に該当する施設へ住民票を異動した場合は対象になります。
住所地特例対象者は以下の通りです。
住所地特例の対象となる以下の施設に入居した場合は、同制度を活用できます。
なかには定員などの条件によって対象外になるので、わからない場合は担当のケアマネージャーや施設の相談窓口に問い合わせてみましょう。
関連記事:有料老人ホームとは?種類・費用・入居条件についてわかりやすく解説
住所地特例制度を申請する場合には「介護保険住所地特例適応・変更・終了届」が必要です。
「自宅から別の市町村の住宅地特例施設へ入居するケース」「自宅から別の市町村の住所地特例施設を2回以上移ったケース」など状況によって、手続きが違ってきます。
自治体によっては提出期限を設けている場合があるので、前もって確認しておきましょう。
グループホームとは、認知症の高齢者が共同生活を送る介護保険制度上の地域密着型サービスです。
地域密着型サービスは、住み慣れた地域で生活できるよう、施設のある自治体に住民票がある方に利用が限定されています。
グループホームに住民票を異動して利用できるかどうかは、自治体によって判断が異なります。
まずは、希望している施設のある自治体に問い合わせてみましょう。
入居する老人ホームが決まったら、現在の自治体で転出届を引っ越し前の2週間以内に提出します。
申請時に必要な書類(住民票を移す本人のもの)は、下記のとおりです。
家族が代理で申請する際は、上記にあわせて委任状や代理人の本人確認書類が必要になりますので持参してください。
老人ホームの入居に伴って、住民票の住所を変更をする際の注意点について紹介します。
それぞれの自治体によって高齢者支援サービスがあり、住民票を異動した先で受けられます。
しかし住民票を移す前の自治体のサービスが、受けられないことも。
サービスの利用料や利用要件も違うので、比較してみましょう。
サービス内容は以下のものがあげられます。
要支援・要介護認定を受けている人で、現住所から別の自治体にある施設へ引っ越しをする場合は、受給資格証明書(要支援・要介護認定を受けていた証明になるもの)の交付を受けます。
受給資格証明書は、老人ホームに入居してから2週間以内に提出しないと無効になってしまうので注意しましょう。
無効になると、新たに要介護認定の申請が必要になってしまいます。
関連記事:【表で解説】老人ホームの種類と違い!選び方のコツや費用を紹介!
施設に入居したからといって、住民票を移すかどうかは任意です。
そのためメリットやデメリットを把握したうえで、どちらがよいかを検討しましょう。
しかし周囲からの助言やネットで調べてみても、情報が多すぎてわかりづらいことも。
スーパー・コートでは、経験豊富なプロの相談員が現在のお悩みや状況から、一人ひとりにあった情報提供と要望に沿った提案をさせていただきます。
これから老人ホームへの入居を検討している方は、まずはスーパー・コートへお気軽にご相談ください。
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監修者
花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。