こんにちは!
今回のブログでは「④多系統萎縮症」について
お届けしようと思います!
多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう、Multiple System Atrophy: MSA)は、
神経系に影響を与える進行性の疾患で、複数の脳の領域に障害を引き起こすことから
「多系統」という名前が付けられています。MSAは、自律神経系や運動系を中心に、
小脳、基底核、脳幹などに萎縮(神経細胞の縮小)を引き起こすことが特徴です。
進行が速く、症状が複雑で多様であるため、診断や治療が難しい疾患です。
MSAの特徴的な症状
MSAは、症状がいくつかの異なる系統に分かれて現れるため、患者ごとに症状が異なります。大きく分けると、以下の2つのタイプがあります:
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MSA-P(パーキンソン型)
- パーキンソン症状に似た症状が現れますが、通常のパーキンソン病とは異なり、ドーパミン補充薬に対する反応が悪いことが特徴です。
- 運動障害:手足の震え(振戦)、筋肉の硬直(筋固縮)、動作が遅くなる(無動)、歩行の障害などが見られます。
- 姿勢の異常:立っているときに姿勢が崩れることがあり、転倒のリスクが高くなります。
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MSA-C(小脳型)
- 小脳が影響を受けることにより、バランスや協調運動に障害が現れます。
- 運動失調:歩行が不安定で、足を引きずるように歩いたり、転倒しやすくなります。
- 手足の震えや動作の不器用さが見られることもあります。
- 発音や嚥下障害:言葉をうまく話すのが難しくなり、飲み込みにくさも現れることがあります。
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自律神経症状
- 起立性低血圧(立ち上がると血圧が急激に下がり、めまいや失神を引き起こす):これがよく見られる症状です。
- 尿失禁:膀胱のコントロールが効かなくなり、尿を我慢できなくなることがあります。
- 発汗異常:過剰に汗をかいたり、逆に汗をかかなくなることもあります。
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認知症・精神症状
- 認知機能の低下や、軽度の記憶障害、注意力の低下が進行することがありますが、アルツハイマー型認知症ほどの急激な進行は見られないことが多いです。
- 抑うつや不安などの精神的な症状も見られることがあります。
原因
多系統萎縮症の原因は明確には解明されていませんが、遺伝的要因が関与している可能性は低いとされています。しかし、環境的要因や異常なタンパク質の蓄積が疾患の発症に関与していると考えられています。具体的には、α-シヌクレインというタンパク質が異常に蓄積し、神経細胞を傷害することが報告されています。
診断
MSAの診断は、主に臨床的な評価に基づいて行われます。以下の検査や評価が行われることが一般的です:
- 病歴の聴取:患者や家族から、症状の経過や日常生活への影響について詳しく聞き取ります。
- 神経学的検査:運動機能の評価や、バランス・協調運動のチェックが行われます。
- 画像検査(MRI):脳の萎縮具合を確認するために、MRIが使用されることがあります。MSAでは、脳幹や小脳の萎縮が見られることがありますが、特異的な所見はないため、診断に役立つ場合もありますが確定診断には至らないこともあります。
- 自律神経機能検査:起立性低血圧や排尿障害などの自律神経症状を調べる検査が行われることもあります。
治療
現在、多系統萎縮症を治すための特効薬は存在しませんが、症状を和らげるための治療が行われます。
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薬物療法
- ドーパミン補充薬(例:レボドパ)は、パーキンソン型の症状に対して一時的に効果があることがありますが、通常のパーキンソン病よりも反応が悪いことが多いです。
- 起立性低血圧には、フルドロコルチゾンなどの薬を使用して血圧を安定させることがあります。
- 抗うつ薬や抗精神病薬が、精神症状に対して使われることもあります。
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理学療法・リハビリテーション
- 運動療法やバランス訓練を行い、運動機能の維持や転倒予防を目指します。
- 言語療法:発話や嚥下障害を改善するための訓練が行われることもあります。
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自律神経症状への対応
- 自律神経系の障害に対して、水分摂取や塩分の摂取の指導、薬物療法が行われることがあります。
- 排尿障害には、排尿をサポートする治療が行われます。
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生活支援
- 症状が進行するにつれて、日常生活の支援が必要になることがあります。患者さんの生活の質を保つために、介護が重要となります。
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